「話が平行線だったため、元夫に養育費の支払いの調停を申し立て、調停の場に携わったのが、私の弁護士としての初仕事でした」

 息子は、“養育費はいらないからパパとの時間が大切”と訴え、古賀弁護士は板挟みに。

自身の離婚経験を語る古賀礼子弁護士
自身の離婚経験を語る古賀礼子弁護士
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 結局、以前と変わらぬ金額で合意したが、調停では父母は今後一切、連絡をとらないこと、面会は父子が直接やりとりをする決まりに。

 父子の関係は良好で、

「私は見ていませんが、面会の別れ際には親子で熱い抱擁があったりと、血のつながった親子の絆というのは深いものなのだなと感じています

 共同親権については、

「私のように父母は決して仲はよくないが、父子の仲は非常にいいケースがあることを知ってほしい。必ずしも離婚した夫婦が仲よく協力しなければならないわけではない。

 離婚後も親という意識を持つことで、適正な分担のもとで育児が行われ、社会の意識も変わり、男性の育児休暇取得率も上がると思います」

 前夫との間にできた妻の子を虐待死させた東京・目黒区女児虐待死についても、親権の問題が関係していると分析し、

「親権という重荷を背負わされ、本当の父親にとって代わって行動したのですが、それが間違った方向に向かってしまった」

 そのうえで、

「母になるための支援機関は多く存在するが、継父などへの支援はほとんどない。この点も問題かなと思っています」

 都内在住の40代女性は、成長した娘と父親を会わせようと元夫を訪ねたことがある。

「お前は母親として何をしたんだって、文句を言われましたからね。養育費は月2万円しか払っていない男にですよ! 月々2万円で子どもが育つかよ、って逆に腹が立ちました。娘には、父親のことは忘れなさいと伝えました」

 腹立たしい気持ちが、思い出すたび今も消えないそうだ。

 '16年度に厚生労働省が行った全国ひとり親世帯等調査では、母子家庭で父親から養育費の支払いを受けているのは約2割。共同親権の導入に期待がかかる。