【写真左】濱口竜介【同右】東出昌大
【写真左】濱口竜介【同右】東出昌大
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カンヌでの大喝采に感激!

『寝ても覚めても』はカンヌ国際映画祭コンペティション部門に選出され、ふたりは現地のワールドプレミア上映に参加してきた。

濱口 カンヌでは僕たちふたり、たくさん抱き合いましたね(笑)。

東出 たくさん抱き合って話をして、楽しかったです。

濱口 僕はカンヌでは、ずっとふわふわしてたんですよ。

東出 今回、濱口監督も、プロデューサーさんも、僕ら出演者も誰ひとりカンヌに行ったことないメンバーでしたからね。

濱口 上映前は単純に怖かった。カンヌの観客は厳しくて、作品が気に入らなければ上映途中でも大勢が席を立って椅子がバタンバタン鳴ることも珍しくないって聞いてたから。もし自分の身にふりかかってきたら……泣いたらいいのかしら、なんてふわふわというか、じりじりした気持ちが続いてたんです(笑)。

東出 2千人入る大劇場での上映後、スタンディングオベーションが起きましたよね。

濱口 最初、儀礼的に起きたのかって疑ったんですけど(笑)。作品と、一緒に映画を作ってきた人たちが、カンヌで大きな拍手で受け入れられたことは、素直にうれしかったですね。

東出 僕としては、浮かれすぎないように、自分で戒めてましたね(笑)。上映後の取材で、海外の記者の方は映画の感想もはっきり言うし、突っ込んだ質問もしてくださるので、それも面白かった。

濱口 ヒロインの友人が、恋愛について口出しして怒るシーンに対して、「何がそんなに問題で、怒る必要があるの?」と、フランスの記者に言われたんですよね? 

東出 新鮮な意見でしたね。

濱口 彼らにしたら、恋愛は当事者同士の問題なんだから、それをあーだこーだ他人が言うのはおかしいってことなんでしょうね。フランス人はさすがに恋愛慣れしてやがるなぁって思ったなぁ(笑)。

東出 いろんな感じ方をされるにせよ、どんな国の人たちにも届くんだ、映画には国境はないんだということを実感できて、感動でした。

濱口 これが僕にとっては商業映画第一作だったんですが、自分が面白いと思う題材をこうしたら面白くなるんじゃないかという方法で撮らせてもらって、それがカンヌ映画祭に選ばれ、多くの人に届けられたことは自信になりました。

東出 僕はカンヌでの最終日の夜、酔っぱらって、監督に“鬼がらみ”をしてしまったんですよね(笑)。僕はこの作品の経験を通して、映画に対する愛を信じるしかないなぁ、と思ったんですよ。クサい言い方ですけど。

 監督のように映画に対する純真無垢の愛を持ち続けている方を、みんな一丸となって信じて、その結果カンヌにも行けたし、見た方にも「よかった」と言ってもらえた。これからも、映画愛を信じて持ち続けていきたいと強く感じました。「あぁ、最後に亮平が口にする言葉、なんていいセリフなんだぁ」と今も思い出します。

濱口 ラストシーン、自分で演出しながらも、いろんなことが凝縮された、なんともいえない表情をするなぁと感じてました。この作品を観客のみなさんにお届けできて、本当によかったと思いますね。

(取材・文/伊藤愛子)


〈PROFILE〉
濱口竜介 ◎1978年12月16日、神奈川県生まれ。'06年、東京芸術大学大学院映像研究科に入学、'08年、修了制作として監督した『PASSION』が高い評価を受ける。東日本大震災後の東北を描いた『なみのおと』『なみのこえ』『うたうひと』(酒井耕との共同監督)、国内外の映画賞を多数受賞した『ハッピーアワー』など、独自の映像世界を発表し続けている

東出昌大 ◎1988年2月1日、埼玉県生まれ。'12年、映画『桐島、部活やめるってよ』で俳優デビュー。'13年、NHK連続テレビ小説『ごちそうさん』で一躍注目の存在となる。今年は『寝ても覚めても』のほか、映画『OVER DRIVE』 『パンク侍、斬られて候』『菊とギロチン』に出演。11月1日、『ビブリア古書堂の事件手帖』の公開を控えている

〈INFORMATION〉
映画『寝ても覚めても』
朝子(唐田えりか)は、写真展で見かけた麦(東出昌大)と劇的に恋に落ちる。ふたりは仲を深め楽しい時を過ごしていたが、あるとき、麦はふらりと出かけ、そのままずっと帰ってこなかった―。2年後、朝子は麦とそっくりな顔をした亮平(東出昌大二役)と出会う。去っていった麦への思いを亮平に重ねて、心を乱す朝子。亮平はそんな朝子の過去を知らないまま、彼女に心を寄せるようになるが……。9月1日(土)より、テアトル新宿、ヒューマントラストシネマ有楽町、渋谷シネクイントほか全国公開