「護岸による弊害がすでに起きている」

 沖縄で確認されているジュゴンは3頭。体長やヒレの形などで個体を識別しており、子どものジュゴンが'15年6月に辺野古沖で目撃されたのを最後に姿を消したという。

ウミガメと泳ぐジュゴン。ジュゴンの好物は海底に生える海草のアマモ(沖縄県提供)
ウミガメと泳ぐジュゴン。ジュゴンの好物は海底に生える海草のアマモ(沖縄県提供)
【写真】辺野古の浜で座り込みをする生前の樹木希林

 辺野古はジュゴンが主食とする海草が豊かに生える一帯があり、いわば食堂だ。

 ダイバーで写真家の牧志治氏は「護岸による弊害がすでに起きている」と指摘する。

「海草7種類のうちベニアマモが生息地で見つからなくなりました。護岸ができたことで潮の流れが変わり、海草に影響を与えたことが考えられます。引き潮で海底の砂が持っていかれ、浅瀬で砂がなくなると海草は根を張ることができなくなる」(牧志氏)

 さらに、海流の変化は珊瑚礁にも影響し、破壊されるおそれがあるという。

「珊瑚は移植できますが、潮の流れや塩分濃度が合わないと生存できません。時期や移動方法によっては一気に死滅する可能性が高いと専門家は指摘しています」

 と前出・権田氏。

 大浦湾では'07年にアオサンゴ群集が発見されている。表面は褐色だが、骨格は藍青色という青い珊瑚礁だ。基地建設予定地の辺野古崎から約3キロ、水深約2~14メートル地点にあり長さ約50メートル、幅約30メートル、高さ約12メートルと大きいため移植はきわめて難しい。

 前出・牧志さんは言う。

辺野古には海草を食べに絶滅危惧種のアオウミガメも時々やってきます。産卵のために帰ってきたとみられるアカウミガメは湾内に入れず迷っていました。生まれ育った浜はすでに護岸工事が進み、帰りたくても帰れないんです」

2015年に辺野古で座り込みをするテントを訪れた樹木さん=写真中央(読者提供)
2015年に辺野古で座り込みをするテントを訪れた樹木さん=写真中央(読者提供)

 辺野古の浜では、基地建設に反対する住民らがこんな話をしてくれた。15日に亡くなった女優・樹木希林さん(享年75)が'15年7月、ドキュメンタリー番組の撮影のため辺野古を訪れ、住民らと一緒に座り込みをしたという。

「樹木さんは遠慮がちにテントに来られ、基地や辺野古のこと、沖縄の話に真剣に耳を傾けてくれました。座り込み参加者の歌に合わせて、手拍子を打ってくれたりと貴重な時間でした。亡くなられたのはとても残念です」

 と70代の女性。

 ジュゴンや珊瑚礁の命は県民の1票にかかっている。