また、見逃せないのは、一般の人々が、あるジャンルのアイコンに近い人が現れると、その人を応援するよりも、「ほかのメンバーあってのこと」「自分はあちら派」などと平坦化したがること。

 SMAPの「世界に一つだけの花」が大ヒットし、「ナンバーワンよりオンリーワン」という風潮が根付いたことで、人々は「競争よりも共存」という意識が強くなりました。それによってエンタメ界は「アイコンが生まれにくい」という影響を受けているのです。 

エンタメに求められる競争とグローバル化

 イケメンからグループアイドル、二世、LGBTまで、多くの芸能人がメディアに大量起用され、共存をベースにした活動をするようになって、活動寿命は確実に延びました。

 しかし、これは裏を返せば、「現状を超える結果を得られにくい」という状態であり、発展性はありません。エンタメもビジネスである以上、人気や利益を上げるためには、熾烈な競争が必要でしょう。

 たとえば、安室さんは多くのアーティストがミリオンセラーを連発した1990年代の熾烈な競争を勝ち抜いたからこそアムラー現象を巻き起こし、2000年代前半の低迷を乗り越えたのも、宇多田ヒカルさん、浜崎あゆみさん、倖田來未さんらとは一線を画すスタンスで戦ってきたから、と言われています。

 “新・歌姫”の誕生には、やはりアーティストも、世間の人々も、テンションの上がるような競争が求められているのではないでしょうか。

 しかし、今、発展途上のアーティストが安室さんのようなスタンスを貫いたら、「わがまま」「生意気」というレッテルを貼られかねないのが難しいところです。

 ただ、エンタメの中で唯一事情が異なるのはスポーツ界。メジャーリーグに二刀流で挑戦し、結果を残している大谷翔平選手と、初の全米オープン女王になった大坂なおみ選手は、それぞれ日本における野球とテニスのアイコンになりました。

 熾烈な競争を勝ち抜いてスターダムにのし上がる姿は、良質なドキュメンタリーのようでもあり、世間の人々に感動を与えています。

 もしかしたら、2人のように世界で活躍することがジャンルのアイコンとなる最善策なのかもしれません。

「世界が驚いたニッポン!スゴ~イですね!!視察団」(テレビ朝日系)、「ぶっこみジャパニーズ」(TBS系)、「世界!ニッポン行きたい人応援団」(テレビ東京系)など、外国人の目を通した日本礼賛番組が量産され、オリンピックや各種ワールドカップの中継が盛り上がるように、もともと日本人は世界で認められることが好きだからです。