古舘プロジェクト所属の鮫肌文殊、山名宏和、樋口卓治という3人の現役バリバリの放送作家が、日々の仕事の中で見聞きした今旬なタレントから裏方まで、TV業界の偉人、怪人、変人の皆さんを毎回1人ピックアップ。勝手に称えまくって表彰していきます。第58回は鮫肌文殊が担当します。

松村邦洋 様

「まだまだ若いつもりだけどオレも年くったなぁ」と実感するのは、昔から聴いてきたアーティストが皆、20周年や30周年を迎えることを知った時である。

 構成を担当した、夢のオーディションバラエティ『ASAYAN』(テレビ東京系)で誕生に立ち会ったモーニング娘。が今年1月でデビュー20周年。いまだ他の追随を許さないロック魂の塊、宮本浩次率いるエレファントカシマシが今年の3月でデビュー30周年。そうそう、サザンオールスターズに至ってはなんとデビュー40周年! 実は私、初めて買ったアルバムがファーストの『熱い胸さわぎ』だったりする。2018年、ストリーミング配信全盛の時代に、アナログのLPレコードで購入したという思い出が時代を感じさせるけれど。

 数々のアーティストがキリのいい周年を迎える中、ある芸人も今年でデビュー30周年を迎えた。それが今回、私が勝手に表彰しようと思っている松村邦洋である。

松村邦洋

 所属する太田プロダクションから『松村邦洋30周年記念ライブ「ひとのふんどし」』の案内が届いたのは6月だった。そうか、松ちゃんも芸人になって30年になるのか! 大御所感なんて微塵(みじん)も感じさせないフレッシュなイメージのままだったので驚いた。

 初めての出会いは今をさかのぼること27年前、文化放送『キッチュ!夜マゲドンの奇蹟』という帯番組にて。私は駆け出し放送作家、彼はいち曜日のレギュラー芸人の立場。すぐに意気投合し、生本番の後、当時住んでいた東中野の私の6畳間のアパートで朝までよく騒いでいた。そうこうするうちに日テレのT部長こと土屋敏男さんの『進め!電波少年』にお互い呼ばれ、私は作家として、彼はタレントとして、一人前にしてもらったのである。以来、いろんな番組で松ちゃんにはお世話になり続けている。

 8月に賑々(にぎにぎ)しく開催された記念ライブは追加公演も行われるほどの大盛況。中でも定番の映画『アウトレイジ』独り再現は圧巻。ビートたけしに西田敏行、そこに大杉漣まで加わって小日向文世で落とす。まるで舞台に全員いるかのように完コピ。誰もが認めるモノマネを超えた憑依芸にはさらに磨きがかかっていた。