乳がんとともに直面した家族の病気

 実は、麻木が乳がんの手術をした翌月、彼女の母親も大きな手術をすることになった。

「母は昔から身体をよく動かす人で、社交ダンスが趣味。すごい健康自慢の人だったんです。でも70歳を過ぎたら人間ドックに行きなさいよって、私に言ってたんです。だから、てっきり母は毎年受けているもんだと思っていたんですよ。

 するとあるとき、母が“胸がキリッとする”と言うから病院に連れて行くと、心臓の大動脈弁が石灰化していて、弁の役割をしていないような状態でした。病名は『大動脈弁狭窄(きょうさく)症』で、医師からは“もうちょっと遅かったら死んでいた”なんて言われて。“お母さん、人間ドックで見つからなかったの?”って聞いたら、“受けても受けても悪いところが見つからないから、モッタイナイと思ってやめていた”って言うんです。いやいや、あなたは一生死なない気だったのかって(笑)」

「母はとても元気! 私より長生きしそう(笑)」と微笑む 撮影/山田智絵
【写真】インタビューを受ける麻木久仁子

 麻木は自身の病気、そして母の病気に直面したことで得た教訓が2つあるという。

まず、いい年になったら、がん検診や人間ドックは受けること。乳がんになってからは友人にも検診をすすめているんですけど、なかなか行ってくれない。理由を問い詰めると“だって、がんが見つかったら怖いじゃん!”って言うんです。でも、それっておかしいじゃない、と。見つけるために行くんだけど、たしかに見つからないほうがいい。それでも、もし早く病気が見つかれば、それだけ治療はラクになるんですから。

 もうひとつは食事。誰しもがいつ病気になるのかわからないから、いざというときのために、治療に耐えうる身体作りをしておくべきだな、と。例えば、抗がん剤治療でも心臓が悪かったり、血圧が高かったりすると、薬の量を控えたりしなければならず、最新治療のメリットを最大限に受けることができない。せっかく医療は日々進んでいるんですから、ベターな選択ができるような身体の準備は常にしておいたほうがよいかな、と思っています。それで“薬膳”を学ぶようになりました。健康をキープするために使えるんです」

 例えば、身体が冷えたと感じたら、しょうがやシナモン、汗をかいてめまいを感じたら潤いのある果物をとる。

薬膳は、必ずしも生薬のようなものを鍋に入れて煮込むというわけじゃない。そのときの体調に合わせて、食材選びや調理法を工夫することで、身体の調整ができるんです