そんなもんでいいんだな

 しかし、今はこう考えが変わってきた。

でもいまだに同期の芸人と、深夜のコンビニの駐車場の輪止めに座って“あれって〇〇だよな”なんて話しながらアイス食ってたりするんですよ(笑)。

 若いころは“なんか楽しいことねーかな”って話してひまをつぶしていた場所だった。それが、今は人生のピラミッドの結構上のところにあって、そんなもんでいいんだなって思えたんです」

 クスッと笑えて、毒気があり、ときにホロリとする本書。女性にもぜひ読んでもらいたいと話す。

「男っていくつになってもこんなこと考えてるんだ、というのを知っていただきたいですね。だから共感するというよりは、いい意味で男を見下しながら楽しんでもらえれば。“何ゴチャゴチャ言ってんの……バカだなぁ!”って思いながら読んでいただければと思います(笑)」

ライターは見た!著者の素顔

 おじさんになってくだらないことが好きになったという若林さん

 「こないだDJ機器を買ったんです。“自分の好きな音楽を聴いてみたい”という気持ち100%で買いました。若いころだと“アイツ金持って、芸人のくせにDJ始めやがった!”とか言われるから無理でしたね。

 これでわかったのは、おじさんってこうやって自意識過剰が減っていくから、恥ずかしげもなくオヤジギャグを言うんだな、ってこと。でもそうなると、お笑い芸人としてどうなのかな、と(笑)」

『ナナメの夕暮れ』
若林正恭=著 
文藝春秋 1296円(税込)
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PROFILE
わかばやし・まさやす 1978年生まれ。東京都出身。中学・高校の同級生・春日俊彰とのお笑いコンビ「オードリー」を結成、2008年にM-1グランプリで総合2位となって一躍人気に。俳優、作家としても活躍、著書『表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬』で斎藤茂太賞を受賞

(文/成田全)