今回のタイトルは、こんな経緯で決まった。

「諦念(ていねん)とか、“あきらめ”という字を使いたいなと思ってたんですけど、南海キャンディーズの山里亮太が『天才はあきらめた』って本を先に出しやがって、かぶったなと(笑)。

 それからいろいろ考えて、肉体的にも若いときと変わってきて、夕方を感じていて、斜めが終わっていくな、あ、ナナメの夕暮れくらいでいいのかな、と……ちょっと鼻につく言い方しますけど、眠る前に降りてきましたね、タイトルが(笑)」

若林正恭 撮影/坂本利幸

父親の死で大切なことを学んだ

 本書では周りの目を気にせず、やりたいことを楽しめるようになっていくさまが綴(つづ)られているが、そうなったのは、おじさんになったこと以外に、ある理由があったと語る。

「親父が死んだのがデカかったですね。闘病の期間が長く、何年も病院のベッドで寝てたんです。それで手術がうまくいって、外出許可が出たんですけど、メチャクチャうれしそうに本を持ってロイヤルホストへ行ったんですよ。

 それを見て“ロイヤルホストで本を読むことって、こんなうれしいことなのか”と思ったんです」

 そんな父親の姿にこういう思いが浮かんだそう。

「趣味とか自分の生活に少しでも張りが出ることって、みんな少しずつ持ってますよね。そういうものがないと、人生キツイ。だから誰かが楽しんでるナイトプールをバカにしちゃいけないんだと思ったんです

 そこから、身近な日常を楽しみながら過ごしていくことの大切さを学んだ。

「それともうひとつ思ったのは、今の世の中って、人より優位に立ちたいとか、いろんなマウンティングをしてるけど、それで勝ったものって、あの世に持っていけないんだなってこと

 だから気が合って、すごいバカ話したり、あれは楽しかったな、美味しかったな、という友達との時間ってホント大事だなって。

 オレは、人生の楽しみがピラミッドだとしたら、何かを成すとか、賞をもらって壇上にいるとか、そういうことが上のほうにあると思ってきたんです」