自宅か葬儀場「どちらに帰られますか?」

 再び、小川社長の話。

「ご連絡いただいたら、病院にお迎えにあがるのですが、最近は“(自宅か葬儀場の)どちらに帰られますか?”と確認するようにしています。

 マンションなどの集合住宅では、近隣に配慮して連れて帰りにくい。一軒家であっても、物理的にご遺体を自宅に入れることができない、隣近所との付き合いがなく気を遣わせたくないと、当社に安置の依頼をする方もいます。以前は確実に自宅に帰っていましたが」

 自宅からは送れないが、“自宅のようなところで家族だけで送りたい”ーーそんなニーズを見越して『家族葬』を前面に打ち出したのは、JR新横浜駅から徒歩5分のオフィス街にある遺体ホテル『ラステル新横浜』だ。

 運営するニチリョクの横田直彦事業部長は、

「都市部では家族葬が増えています。火葬場は混み合う時間帯があり、ご遺体の安置場所にみなさん困り始めていた。安置でき、ご家族も面会でき、ワンストップで家族葬まで行えるサービスが望まれていたのが開業のキッカケです。9階建ての建物の中には小さな式場もあります」

 と経緯を説明する。

 1泊1万2000円だが、安置だけというケースはほぼないという。小規模の家族葬、通夜・葬儀なしで直接、火葬場へ向かう直葬、そして従前の一般葬も執り行えるが、

「故人様と1泊2日、一緒に過ごされる『リビング家族葬』が好評ですね。ご自宅のマンションのようなお部屋をつくりました。バスルームやキッチンなどもあり、宿泊をしてお別れができます」

 と前出・横田事業部長。

 同施設では、6階の面会室で20体、7階の個室では7体を安置できる。

「面会は24時間可能で、ご家族、ご友人などもお会いいただけます。安置に期限はございません」(同前)

 75歳の夫を亡くした妻は、同社のアンケートに《娘が毎晩、仕事帰りにラステルに寄って、父親に面会をして、徐々にその死を受け入れていったようです。いつでも会えるのがよかったようです》と記入し、満足度を伝えている。

 ゆっくりとしたお別れを望む家族がいる一方で、直葬を望む家族も増えている。

 前出の小川社長は、

「病院から火葬場の安置施設に行って、あくる日に火葬をするのが直葬。ただ、火葬場に預かっていただくと、冷蔵設備から出して火葬前に5分~10分ほどしか時間をもらえないんです。当社からの出棺では、30分ほどお別れの時間を取っていただいています」