“引き取り屋”による新たな虐待も発生

 現在、動物愛護管理法は、「犬やなどの愛護動物をみだりに殺傷した者は2年以下の懲役または200万円以下の罰金など」と定められているのだが、

「検挙数は8年前の倍以上になっているとはいえ、去年はたったの68件。'17年に起きた埼玉の6匹の虐待殺傷でも執行猶予つきの判決でした。

 動物愛護法が改正されて、保健所は業者からの動物の引き取りを拒否できるようになりましたが、受け皿を失って困っている業者を狙った“引き取り屋”というビジネスが生まれ、新たな虐待も起こっています

 1匹あたり数千円~数万円程度の費用を受け取り、売れる犬は自分の店で転売し、繁殖能力が残っていれば子犬子を産ませて販売する。それ以外の犬は世話をすることもなく放置……。法の目をかいくぐり、悪質ビジネスがまかり通っている。

 今年は5年に1度の動物愛護管理法の見直し年にあたる。法改正に向けて杉本たちも積極的な活動を展開している。

「とにかく厳格な法律に変えなければいけない。人のモラルってそれほど信用できるものじゃないですから。やっぱり法律が大切なんですよ」

 活動の中で国会議員と向き合うことも少なくない。

「法律が変わらないのは、利権があるから。動物愛護法は議員立法だから、どこかの先生がおいしい思いをしているのでしょう。結局、議員立法って最終的にはどれだけ根回しできるかなんです。

 超党派議員連盟の先生方はみなさんとても頑張っていて、中には各党協議になったら自分が党内の意見をまとめるよ、と言ってくださる先生もいますが、各条文案について全党一致となるかはなかなか難しいところです」

 さらに都道府県の各首長にも働きかけている。

「今後は地方から変わってもらって、どんどん意識が高くなれば、最終的に国がいちばん遅れていると証明されます。国がやらざるをえない、そういう流れにしていきたいと考えています。

 おそらくとても時間がかかるし、想像を超える大変な作業でしょう。けれども、ずっとやり続けていたら、いつかは必ず何かがフッと変わるときがある。そう信じて自分を励ましながら取り組んでいます」


《PROFILE》
杉本彩 ◎女優、歌手、小説家など多方面で活動しながら、動物愛護活動として公益財団法人動物環境・福祉協会Evaの理事長を務める