実は『変態紳士』を読んだ直後、仕事で高嶋さんにお会いする機会があった。ここに書いたような感想を告げると、高嶋さんが笑顔でひと言、

混沌としてるでしょ

 それだ。僕が『変態紳士』に感じた一番の魅力は、その混沌さにある。そしてそれは同時に、高嶋政宏さんという人物の魅力でもある。

 混沌とした人間は、時として厄介だ。何が出てくるか予想がつかないからである。だが、こちらの心持ち次第では、こんなにおもしろいことはない。何が出てくるかわからない。常にサプライズ感があるからだ。

 そこで今回、高嶋政宏さんには『優秀びっくり芸能人賞』を勝手に差し上げ、勝手に表彰いたします。

 おととしぐらいから、バラエティー番組では長嶋一茂さん、石原良純さんの人気が再燃している。ふたりに共通するのは、二世タレント特有の浮世離れした感覚。しかも、それが嫌味な感じがしない育ちの良さ、口の悪い表現をすれば「ぼんぼん感」だろう。高嶋政宏さんも彼らと同じジャンルに属していると思う。

 現在、『My Anniversary Song』(BS朝日・毎週金曜よる10時24分)の司会者として、音楽に関するマニアックな一面を披露している高嶋さんだが、『変態紳士』を読む限り、バラエティータレントとしても、まだまだ莫大なポテンシャルを秘めている。

 職人の道具に対する思いがテーマの『匠のフェチ』、女性たちのストレス解消番組『僕を罵ってください』……しまった、即興で考えたら偏りすぎた。もっとゴールデンタイム向けに……『高嶋政宏VS50人の健康おたく』はどうだ? 高嶋さん目線で、動物の生態を紹介する番組も面白そうだ。

 一茂さんや良純さんと比べると、高嶋さんは劇薬度が高い。何が出てくるかわからない混沌とした魅力を保ちつつ、いかにその毒性を抑えることができるのか。これはバラエティー番組制作者にとって、2019年の研究課題の1つといえるだろう。

 

<プロフィール>
山名宏和(やまな・ひろかず)
古舘プロジェクト所属。『行列のできる法律相談所』『ダウンタウンDX』といったバラエティー番組から、『ガイアの夜明け』『未来世紀ジパング』といった経済番組まで、よく言えば幅広く、よく言わなければ節操なく、放送作家として活動中。