“自分だけ”の言葉が誰かにとっての“名言”へ

 そんな数ある中でも、松岡さんがこれまでにいちばん衝撃を受けたものは、交換日記から闘病記へと移っていくものだったという。

『ピカレスク』店長・松岡詩美さん 「いつか、方言で書かれたものが読んでみたいです」と松岡さん。主婦の手帳も少ないとのことなので、興味のある方は寄贈してみては?
『ピカレスク』店長・松岡詩美さん 「いつか、方言で書かれたものが読んでみたいです」と松岡さん。主婦の手帳も少ないとのことなので、興味のある方は寄贈してみては?
【写真】20代から60代…全部で8人の手帳を公開

「交換日記のときは健康で“来週は○○の映画を見に行く!”など明るい内容だったのが、病気になってからはどんどん負の感情に飲み込まれていって。失明していく病気だったようで、文字も次第に乱雑になっていくんです。

 映画とか小説では得られない、人の恐怖とか怒り、悲しみなど、“生”の感情が伝わってきました。ひとりの命が揺さぶられていく様子に、いろいろと考えさせられましたね

 手帳や日記は、本来は第三者が読むものではなく“自分だけ”のもの。そこに書かれた本心や本音にウソはなく、読み手によってはそれが名言となって響くことも。

 実際に手帳や日記を手にした人からは、“あのフレーズにハッとさせられた”など、何げなく書かれた言葉に胸打たれる人も少なくないという。

同じ時代に生きているけど、その人の知りえない裏側の奥底みたいなものにじっくり触れることができます。その方がどう考えて生きてきた方なのか、その道のりを反芻することでゆくゆくは他者への理解が深まったらいいなと。

 言葉からはもちろんですが、筆跡とか紙の汚れなど、言語化しにくい情報からも何かしらの刺激やドキドキを味わえると思います」

 いろんな“人生”が詰まった『手帳類図書室』。あなたはここで、どんなメッセージを受け取りますか?

『Picaresque(ピカレスク)』
営業は土日祝(11時~18時)/東京都渋谷区代々木4-54-7
以前は買い取りもしていたが、現在は寄贈のみ。寄贈したい方は『手帳類図書室』のホームページ(https://techorui.jp/)をチェック。『手帳類図書室』を利用したい、またお店に来て寄贈したい方は直接『ピカレスク』まで。店内には可愛い雑貨がズラリと並び、個展やトークショーも。【公式サイト】https://picaresquejpn.com/

<撮影/山田智絵>