東京キャットガーディアンのHPには、「譲渡に関わる諸費用」が掲載されている。

 そこには「不妊去勢手術代・駆虫費用・3種混合ワクチン・白血病ウイルスチェック(4か月齢以上)・その他の医療費・飼育費用・飼育施設維持費および人件費・しっぽコール(個体番号によって迷子猫を探す仕組み)加入費・事務手数料」の単価が明記され、諸費用の合計は、3万4000円〜4万4000円となっている。

「うちの団体では、毎月800万円の経費がかかります。譲渡数は月間60頭ですから、240万円くらいの譲渡費用が発生し、会員会費や保護猫カフェの入場時の寄付金など一般支援も合わせて、毎月数万円の黒字になっています」

突然、渡された遺言書

NPO法人『東京キャットガーディアン』山本葉子さん
【写真多数】保護猫カフェにいる可愛い猫たちと癒されるお客さん他

 山本さん含む保護団体職員全員がこの仕事のプロとして、副業せずに生計を立てるという目標も現在達成している。

 東京キャットガーディアンは次々と新たな事業を展開している。'09年には「成猫のお引き取りと再譲渡事業」を開始。

 これは、高齢者や病気で入院せざるをえない人が「もし、私に何かあったら猫をお願いします」と、団体に飼い猫を託せる引き取り事業。緊急の事態に備えた積立方式だ。毎月3800円の積立金を預かり、6年で満期になる(27万3600円)。

「今すぐお願い」という場合、一括払いも可能で、ケアをしながら再譲渡につなぐか終生飼育してくれる。また、引き取り時に健康に問題なく、譲渡見込みが高い3歳以下であれば、16万3000円で引き取る場合もある。

 この事業は後に『ねこのゆめ』と名称を変え、年齢や状態に関係なく対応するようになった。その背景には、こんな出来事があったという。

 ある日、シェルターに50代後半の男性が訪ねてきた。「代表に会いたい。時間がないんだ」と言うので、山本さんは立川市の彼の家を訪ねた。

「すい臓がんで余命数か月なんだ。猫のために建てた家と、この猫たちと、財産を全部渡したい。外の猫たちも可能な限り助けてやってくれ」

 そして、「これは仕事の契約書だよ」と遺言書を渡された。以降、成猫の引き取りと再譲渡の事業を拡大させたという。

 遺贈を受けた立川市の家屋は現在、譲渡対象ではない猫のシェルターとして、高齢の猫やメンタルに問題のある猫など30頭が保護されている。

 '10年からは日本初の「猫付きマンションR」を、'14年には「猫付きシェアハウスR」の事業を開始した。続いてペット可の物件を扱う「しっぽ不動産」の事業も始めた。

「当たり前に伴侶動物と住める場所(物件)を増やしていきたい。今、圧倒的に足りていません。賃貸物件全体でペット可の物件は17%にすぎない。猫は特に隠れて飼われています。高齢化が進んだ公団ではおそらく半分の人たちが猫か犬を飼っています。入院時や、転居でもなかなか連れていくことが難しい。すると置き去りにするなど悲惨な結果につながります」

 山本さんは、'15年に『猫を助ける仕事』という本を著した。その共著者である元ニッセイ基礎研究所不動産研究部長の松村徹さんはこう言う。

「山本さんの目指す飼い主にもペットにも優しい住宅はじわじわと普及していくと思います。しかたなしにやっているペット可住宅とペットに優しい住宅の違いがもっとユーザーに理解される必要があるでしょうね」