投稿者さんのご質問を裏読みすると、「じゃあ、今はなんで似たような番組が多いの?」と聞かれている気がしてドキドキしてきましたが、ボクなりの見解を、チコちゃん風に答えると、

「それは今のテレビは企画よりテーマの時代だから〜」

 ではないかと思います

 企画よりテーマとはどういうことかというと。

 自分の経験からいうと、誰も見たことのない視聴率のとれる企画を作るのは、結構大変です。お金と時間をかけ、何度も会議を重ね、失敗を繰り返してもできないときもある。企画を開発しているうちに時間切れで打ち切りなんてことがちょくちょくありました。さらに予算削減、コンプライアンス重視、働き方改革と環境も変わってきた……。

 そこでテレビは視聴率のとれるテーマに少しずつ移行していきました。

 ここでいうテーマとは『健康』『グルメ』『雑学』などなど、ジャンルにあまり企画性を乗せずに見せる番組です。

 企画はまねするとパクリと言われてしまいますが、テーマはもともとテレビが作ったものではないので、あんまり気兼ねせずにまねしてしまう。ゆえにいろんな局で何度も見るので、似たような番組が多くなってしまうのです。

 少しいい話をすると、今、視聴率の物差しが変わりだしています。

 簡単に言うと、今までは大人から子どもまですべての年齢層が見ている番組が、視聴率のとれる番組だったのですが、これからはスポンサーが提供したくなるような、「ある世代が“面白い!”という番組でもいいよ!」というふうに物差しが変わってきました。これを業界用語で“コアターゲット”と言います。

 そうなると再び企画の時代がやってくる可能性が大です。

 予算がない、コンプライアンスがうるさい、働き方改革で時間がないとか言い訳ができなくなってきました。これは自分も含めてです。

 映画『カメラを止めるな!』が若者にウケるなら、あれを超える番組を作ろう! というのもOK!

 そんなディレクターがたくさん出てくることを願い、この質問を取り上げさせてもらいました。

 『ヒットを飛ばしている業界に才能は集まる!』

 昔、なんかの本に書いてあった言葉です。

 再び、そんなメディアに戻れるような企画がビシバシ見られることを期待していてください。

 投稿者さんありがとうございます。まだ、テレビを嫌いにならないで!


<プロフィール>
樋口卓治(ひぐち・たくじ)
古舘プロジェクト所属。『中居正広の金曜のスマイルたちへ』『ぴったんこカン・カン』『Qさま!!』『池上彰のニュースそうだったのか!!』『日本人のおなまえっ!』などのバラエティー番組を手がける。また小説『ボクの妻と結婚してください。』を上梓し、2016年に織田裕二主演で映画化された。著書に『もう一度、お父さんと呼んでくれ。』『続・ボクの妻と結婚してください。』。最新刊は『ファミリーラブストーリー』(講談社文庫)。直近では、テレビ朝日『離婚なふたり』(4月5・12日、23時15分〜放送)の脚本を担当。監督は吉田大八、主演はリリー・フランキー。