3姉妹の長女として、妹の世話役はもちろん、近所の子どもたちをも束ねるたくましさがあったという
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 花の営業をしながら、野口さんは周囲からの評判を落とすことがない。目先の利益にとらわれるのではなく、信頼関係を築くことを徹底しているからだ。仕事や見た目で人を差別しない姿勢で、多くの人脈を作り上げてきた。

“人との関係はカネではない”

 野口さんは6年前、所属していた守成クラブという異業種交流会で新会場(新しい会)を立ち上げた。こうした会に参加するのは経営者ばかりで、主な目的は売り上げを上げることだ。より多くの人と名刺を交換し、自社製品やサービスをアピールするのだ。クラブの会員で、野口さんの顧客でもある武田恭平さん(29)はこう語る。

「野口さんとは、ビジネスの交流会なのにずっと仕事の話をせず、人間関係の相談などプライベートで付き合っていたんです。でもあるとき“あなたの会社で清掃業務をやってるよね、うちのビルを建て替えるから、メンテナンス業者を探しているの。ビルを見てもらえない?”と言われました。それ以来、仕事をいただいています。僕も知り合いの経営者に花を贈ったり、お彼岸などの季節の花は野口さんから買っていますよ」

 自分の利益よりも先に相手を思いやれることが、結果的にビジネスにつながるのだ。 

 野口さんは、会でこんな本音の話をするようにした。

「昨日今日、今日明日の仕事しか頭にない人は参加しても仕事にならない。10年後の仲間づくりのために、その人脈を今ある余力で、なかったら無理にでもつくっておきましょうよ。絶対あとでわかるからと、本音を話し始めたの」

 野口さんの運営する守成クラブ新東京セントラル会場は縦社会をつくらず横のつながりを大事にする、本音で話せる関係をつくるなど、ほかの会場にはない自由な方針を打ち出している。会員数300人は、全国に150ほどある会場の中でもトップクラスだ。

守成会の「一人はみんなのために、みんなは一人のために」との理念に感銘を受けた

 “人との関係はカネではない”と、ホステスをしていたときに学んだという。

 ホステスは1日に100万円や200万円落とす太客につけば1日の収入は10数万円にもなる。実家の借金も早く返したかった。自然と太客ばかりを大事にするようになった。それを見た店のママにある日「1度、5000円の客と食事に行ってきなさい」と言われた。最初は、稼いでる自分をひがんでそんな意地悪を言うのだと思った。

「でも違うのよ。1度そのお客さんと食事に行ったら、気を遣わないでいいので、心が安まるの。太客は一時的な娯楽のために来ている人たちが多く、こちらも盛り上げないとっていうプレッシャーがある。でも、その方は私の話を全部聞いてくれる。意外でした。それから細客の方が来てくれたときは“助けに来てくれた”と思うようになったの」

 彼らは、野口さんが一生懸命働く姿を見ていて、ファンになってくれた人たちだった。「ああ私、なんて勘違いをしてたんだろう」と気づいたという。当時の“低予算”なお客さんは、今でもお花を買ってくれる大切な顧客だ。