ICUから一般病棟へ

 余命宣告されていた息子の容体は、またたく間によくなっていき、ついにICUから一般病棟に移れるようになるまで回復

優司君の残された時間がどれくらいあるのか、私たちにもわかりません。ですが、その大切な時間を、ご家族で有効に使っていただきたい

 主治医がかけてくれたその言葉は、決して治療をあきらめたのでも、見放されたのでもありません。

 一般病棟での生活は、容体がいいときも悪いときもあったけれど、「優司と一緒にいられて幸せ、病気だけど今日も1日、生きていられて幸せ」と思いながら、穏やかに7か月をともに過ごしました。

 しかし、2歳4か月になった昨年5月。

 息子は私の腕の中で、静かに息を引き取りました

 873日のちょっと短い人生を、懸命に生き抜いたわが子に「愛してる、ありがとう、幸せだね……」と心から思い、しっかりと抱きしめました。

 絶望の中でただ嘆くことしかできなかった私は、言葉の持つ力、周りの人へ感謝する気持ちに救われ、全力で息子を愛することができました。

収益は病院へ寄付

著者の武藤あずささんと息子の優司くん

 このたび、ご縁のあった出版社より当時のことを振り返った、1冊の本を出させていただくことになりました。

 私たちがお世話になった小児病院には、今も病気と闘い、難病とともに生きる子どもたちがたくさんいます。

 少しでも生きる希望になるよう、ささやかですが、本の収益は経費を除いた全額を東京都世田谷区にある国立成育医療研究センターへ寄付させていただきます。

 そして、本をご購入くださった方々のお気持ちが、子どもたちの生きる希望になっていくことを切に願うばかりです。

最後に

 早いもので、息子が亡くなってから1年がたちました。

 街中で同じぐらいの男の子を見ると、今でも胸がチクリと痛み、もう1度この腕にあの温かくて柔らかいぬくもりを感じたい、と思うこともあります。けれど、息子と過ごした時間の中で、大事なことを学んだのです。

“人間は周りの人へ感謝することで、幸せを感じることができる”

 だからこそ、私は優司に心から感謝しています。

優ちゃん、ありがとう。ママはこれから先、何があっても幸せでいられるよ

『ありがとう。ママはもう大丈夫だよ ― 泣いて、泣いて、笑って笑った873日』(ライトワーカー)
著=武藤あずさ
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PROFILE
●むとう・あずさ● 1982年生まれ、千葉県出身。立教大学社会学部卒。本名は、武藤梓。大学卒業後、美容関係の会社に就職。その後、新たな仕事を始めるが、新宿歌舞伎町のホストにはまり、自ら稼ぎ出した5000万円もの大金を一人のホスト(今の夫)に2年間で使う。しかし、結婚・妊娠を機にホストだった夫と共に歌舞伎町を離れる。そして、2人で一念発起し、小さな立ち飲み居酒屋を大田区大森駅にオープン。現在、飲食店の会社は知人に譲渡し、別法人2社の代表取締役に、 夫は悠々自適な主夫となる。長男次男に恵まれたが、次男は出生時より障害があり、2018年5月に他界。しかし、次男の看病の期間に学んだことを今も楽しく実践しながら、物質的にも精神的にも豊かな生活を送っている。