そのオープニング映像はド派手で、でも少し毒っ気も含まれていて、まさにかつてのSMAPライブの幕間映像を思い起こさせるクオリティー。

 この“ライブっぽい”オープニング映像の時点で、ファンとしてはかなり感慨深くなってしまうのですが、思わず頭が懐古的になりかけていた客席の私が、本当に驚かされたのはここからでした。

「まるでライブに来たかのような映像が終わると、来場者は客席という境界線を越えて、自分の足で目の前のステージに踏み込んで展示作品を鑑賞する」

 この表現ひとつで、同じアイドルファンの方なら私の緊張が一気にどれだけ高まったか、きっと自分のことのように想像していただけるのではないでしょうか。

 そして誘われる形で、ついに上がった“アイドルの聖域”。いざそこでスポットライトに照らし出されていたものとは……アイドル・香取慎吾の生々しく、そして、ときに衝撃的な作品の数々でした。

香取慎吾『サントリーオールフリーpresentsBOUM!BOUM!BOUM!香取慎吾NIPPON初個展』(筆者撮影)
香取慎吾『サントリーオールフリーpresentsBOUM!BOUM!BOUM!香取慎吾NIPPON初個展』(筆者撮影)
【写真】アーティスト香取慎吾の個性的な作品たち

「俺はどうせピエロだから」

 個展に登場する作品は全部で121点。その中には従来のアイドルイメージに近い明るい色彩の作品から、行き場のない怒りや悲しみをぶちまけたかのような作品までありました。また、中には、あの解散騒動真っただ中の時期に制作されていたとわかる作品も含まれています。

 もちろん、ひとりの人間としての香取慎吾に喜怒哀楽が存在することは当たり前の話です。

 ただファンは、アイドルとしての彼が「いつも明るく元気で笑顔での慎吾ちゃん」を何よりも大事に守り抜いてきたということを、より深く知っています。だかららこそ、こういう形で、感情をスポットライトの下に晒(さら)していく香取慎吾を目撃するなんて、個展を見るまでまったく想像できていませんでした。

「『俺はどうせピエロだから』。そんなふうに思っていた時期もありました」(展示作品「No title」の説明文より)

 しかし同時に「興味深いな」とも感じたものがありました。