無償化でどうなる? 高等教育編

  とりわけ家計負担が重い、大学・短大・専門学校など高等教育の無償化から見ていこう。

「経済的な事情で大学などに行けない子を減らすためといった理由で、 “給付型奨学金”と“授業料減免”という2本立ての支援が始まります。

 ただ、実質無償になるのは、年収約270万円以下(※)の住民税非課税世帯のみで、国公立校に通う場合です。私立大学なら学部によっては数十万円の自己負担が必要になることも。

 この支援は、年収が増えれば減額させられ、年収380万円(※)を超える場合は給付型奨学金も授業料減免もゼロ、何の恩恵も受けられません。できれば、中間層である年収400万円台の家庭も救ってほしいものです」

 高等教育の無償化にあたってチェックされるのは、親の所得だけではない。本人の学習意欲や成績のほか、通う大学が一定の条件を満たしているかといったことも審査されるなど、ハードルは高い。

「まだ無償化は不確定な部分もあり、どうなるかわからない状況ですから、大学進学費用は少しでも早く積み立てをスタートしましょう。理想は出産後から月3万円を積み立てることですが、難しければ子ども手当の1万円だけでも確保して貯めていってみては? 

 すでに子どもが大きい場合は、足りない金額をあと何年で貯めなくてはならないのか、それには月いくら貯めていけばいいのかを計算してみましょう。それでも間に合わなければ、奨学金や教育ローン、本人のアルバイトなどでカバーすることになります」

 文部科学省の平成30年度の調査によると、大学進学率は53・3%で過去最高を記録。加えて、景気低迷による親の厳しい懐事情を反映して、奨学金の利用率は高い。JASSO(日本学生支援機構。旧・日本育英会)の『平成28年度学生生活調査』によれば、大学生のおよそ半数がなんらかの形で奨学金を利用しているという。

 問題は卒業後だ。奨学金問題に詳しい桜美林大学の小林雅之教授は注意を呼びかける。

「“奨学金”という名前を聞くと、“もらえる”タイプ、すなわちすべて給付型だと勘違いする人も少なくない。実は、日本の奨学金のほとんどが、返還が必要な貸与型です。そのため卒業後、返還に苦労する人があとを絶ちません

 国や民間の教育ローンと、どう違うのか?

教育ローンは、親の名義で借りて、親が返します。そして通常は、借りた直後から返済がスタートします。一方、奨学金は学生本人が借りて、本人が返します。返済は、卒業してからスタートします。そういった違いを把握して使い分けてください」(小林教授、以下同)


※無償化になる目安の年収は、モデル世帯の場合の数字です。家族構成によっては異なる金額になります