無償化でどうなる? 幼児教育・保育編

 今年10月からスタートする幼児教育・保育の無償化。主な内容は以下のとおりだ。

 共働きや、働いているひとり親の家庭が3〜5歳児を預ける場合、認可保育園や認定こども園の利用料が無償になる(食事や制服などは自己負担)。幼稚園の利用料は2万5700円まで無償(それ以上は自己負担)に。幼稚園の預かり保育や基準をクリアした認可外保育施設を利用する場合は、月3万7000円まで無償化する。

 専業主婦(夫)家庭の場合、幼稚園や認定こども園の利用料が2万5700円まで無償に。ただし、認可外保育施設や幼稚園の預かり保育は対象外で、自己負担となる。

「今回の無償化でいちばん恩恵を受けるのは、共働き・高所得・認可保育園在籍の家庭。高かった保育料の負担がなくなるわけですから。一方、共働きでも低所得だった場合、もともと保育料が低く設定されているので、無償になってもさほど恩恵を感じないかもしれません」

 と話すのは、前出のあんびるさん。

 一方、保育問題アナリストの村山祐一さんは別の問題を指摘する。

これまで保育園では、給食の食材費が保育料に含まれていましたが、幼稚園と足並みをそろえるという理由から別途請求という形になり、利用者は約5000円支払うことになる予定です。そのため、低所得層の世帯の中には、負担がほとんど減らない、あるいは負担アップになるところも出てくる可能性があります。

 また、食材費は自治体ではなく各施設で徴収することになる可能性があり、そうなれば現場スタッフの負担が増すほか、払えない家庭と施設側とのあつれきも出てくるという懸念があります」

 専業主婦家庭については、無償化になる施設が共働きより限られるなど、条件がより厳しいことも気がかりだ。

「専業主婦でも、介護や病気など、働けない事情があることが多いので、そういう家庭へのフォローもほしいもの。今回の無償化からは、“主婦も子どもを預けて、しっかり働いて”という国からのメッセージを感じます」(あんびるさん)

 村山さんも「働いている、あるいは働きたいけれど基準を満たす園に入れず無償化の対象にもならない、そんな家庭が出てくるはずです」と話し、まず取り組むべき課題があると指摘する。

「今回の無償化は高所得の家庭が恩恵を受ける内容。それより前に、まず待機児童の解消や保育環境の充実を優先すべきです。入園できなければ無償化は受けられませんし、なにより子どもたちを第一に考えてほしいものです」


《PROFILE》
あんびるえつこさん ◎生活経済ジャーナリスト。著書に『消費者教育ワークショップ実践集』など

小林雅之さん ◎桜美林大学総合研究機構教授。主な研究テーマは「高等教育論」「教育費負担」など

村山祐一さん ◎保育学研究者、保育問題アナリスト。社会福祉法人加須福祉会『みつまたエコ・エデュケアセンター』の理事長も務める