「生活保護」からのベーシックインカム

 少子高齢化が進む日本。今後の経済の見通しは、決して明るいものではない。ひろゆきさんがひとつの解決策としてあげているのが、冒頭で紹介したベーシックインカム制度だ。言い換えれば、国民みんなが生活保護をもらう制度にしようということ。

「今の生活保護って、本当に保護が必要な、困っている人が受けづらい状況になっていますよね。それを変えるには、働くのがしんどい人がどんどん申請して、生活保護を堂々と受給していけばいいんです。そうやって、役所が決めた生活保護の支給の水準を上げていくんです。

 今、『不正受給だ!』なんて怒っている人は、お金が稼げなくて苦しい人でしょう。頑張って働いて手取りが10万、でも生活保護なら働かないで月7万、それってどうなのって怒る。でも、自分ももらえるとなれば生活保護受給者は攻撃相手じゃなく仲間になるはずです」

 その方法を突き詰めて、生活保護を国民全員に支給することが実現したとして、日本の財政が破綻したり、国民みんなが働かなくなって日本経済が沈没したりしてしまわないのだろうか?

「月々の生活費が保障されれば、『おこづかい程度で働けばいい』と低い時給が受け入れられるようになります。すると時給が300円くらいに下がって、海外との価格競争に勝てるようになる。そうやって、利益を上げた企業に納税してもらって財源とする……というのはどうでしょう。時給が下がれば商品価格も下がるので、少ない金額でも快適に暮らせるようになりますよ」

 社会のお金の配分の優先順位を変えてはどうかという提案もしている。

60代の人に医療費1500万円かける前に、20代のうちに1500万円渡すんです。例えば60歳でがんになると社会保障費の負担が年間2000万円くらいになります。そのお金を若いうちに出してもらえたら、安心して子どもを産み育てることができ、少子化も解決するのでは?

 その子が育てば、なんらかの形で納税するようになり、1500万円くらいは回収できます。そして税収が増えれば、高齢者に回せるお金も増えるというわけです」

 日本の社会をよい方向に変えていくため、私たち庶民に今できることは?

「やりたい仕事があるわけではなく、とにかくお金がなくて不安なら、生活保護の申請をしましょう。生活の不安がなくなって、時間にゆとりができれば、何か新しいアイデアが生まれるかもしれない。あの『ハリー・ポッター』第1作も、シングルマザーが生活保護を受給しながら書いた作品なんですよ」

ライターは見た!著者の素顔

 ネット系サービスで名をあげた人は「ムダを嫌う」イメージがあり、うかつな質問をしないように……とドキドキしながら取材をスタート。実際にお会いしたひろゆきさんは、終始やわらかい雰囲気でたくさん語ってくださいました。家ではヨーグルトを育てて(?)いるそう。「牛乳にヨーグルトを入れて、36度くらいにしておくと、8時間くらいでヨーグルトになります。時間によって酸味が変わってくるんですよ」とニコニコしながら教えてくれました。

『これからを生きるための無敵の―お金の話』ひろゆき=著 興陽館 ※記事の中の写真をクリックするとアマゾンの紹介ページにジャンプします

ひろゆき●本名、西村博之。1976年生まれ。中央大学在学中に米国アーカンソー州に留学。1999年にインターネットの匿名掲示板“2ちゃんねる”を開設、初代管理人となる。東京プラス代表取締役、未来検索ブラジルの取締役。2006年、“ニコニコ動画”を開始して反響を呼ぶ。2015年からは英語圏最大の匿名掲示板“4chan”の管理人。

(取材・文/鷺島鈴香)