光営業、その効能

──そうなったら忘年会に参加した芸人たちによる『闇営業芸人』の回が放送されるかもしれませんね。入江さんは所属事務所を解雇されてしまいましたが……。それにしても“友達5000人”と豪語する彼の人脈はすさまじいですよね。

「安倍首相との写真が出回っていたり、あの紀州のドン・ファンの幼妻ともつながりがあるという記事も出ていました。芸人をやめても人脈を生かした仕事をしていくのかもしれません。

 不思議なのは入江さんと相方の矢部太郎さんがコンビとしてあまりにも対照的なところですよね。ベストセラーになった『大家さんと僕』の絵のタッチやほのぼの系のストーリーと闇営業のギャップはまさに光と闇

 矢部さんが大家さんというひとりの人間との関係を大切にしていたのに対し、入江さんは人脈を作るために誰彼かまわず知り合いになりすぎたのかもしれません。もっとひとりひとりと大切に向き合うべきだったのかな、と。

 今後、心を入れ替えて出直すということであれば、まず住んでいるところの大家さんに挨拶にいくところから始めるのがいいのではないでしょうか。すでに闇営業のお金で“持ち家”に住んでいるのかもしれませんが……

──同じく闇営業で事務所を解雇された楽しんごさんが「闇営業なんてみんなやってるわ!」とぶっちゃけたりで、すっかりダークなイメージがついてしまったお笑い界ですが、今後、イメージ回復を図るためにはどうしたらいいでしょうか?

「そもそも闇営業は絶対に運気が下がるものでしかないと思います。半グレの人たちも人の恨みを背負っていて、宴会場に負のエネルギーが充満していたような気もしますし。

 今回、闇営業でイメージを損ねてしまった芸人さんたちは、無償でチャリティーイベントを開いてみたり、ボランティア活動に精を出すなどといった、“光営業”にもっと力を入れるべきなのかもしれません。サンドウィッチマンさんは東日本大震災の被災地に寄付を呼びかけ4億円を集めたり、くりぃむしちゅーさんも熊本地震の復興のために月1のペースでチャリティートークライブを開いています。

 目先の利益や私利私欲のためはでなく、世の中のためになるような活動をすることで好感度も上がりますし、結果、たくさん仕事がくるようになると思います。お金持ちになるにしても、これがいちばん近道なのではないでしょうか


辛酸なめ子/漫画家・コラムニスト。
東京都生まれ、埼玉県育ち。武蔵野美術大学短期大学部デザイン科グラフィックデザイン専攻卒業。近著は『大人のコミュニケーション術』(光文社新書)『おしゃ修行』(双葉社)『魂活道場』(学研)、『ヌルラン』(太田出版)など。