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 子どもへの虐待が後を絶たない。

 2018年3月、東京都目黒区の船戸結愛さん(当時5)が継父と実母によって虐待され、死亡した。ノートには《もっとあしたはできるようにするから もうおねがい ゆるしてください ゆるしてください お願いします》などと書かれていた。

 また、'19年1月に千葉県野田市の栗原心愛さん(当時10)が亡くなった事件では、父親が虐待する様子を母親が撮影していた。そして6月、札幌市の池田詩梨さん(当時2)が母親と交際相手から暴行を受けて衰弱死する事件が起きた。

 いずれの事件も虐待の兆候が表れていたが、見過ごされた。なぜ幼い子どもの命を救うことができなかったのか? 虐待対応のあり方などについて、神奈川県内の児童相談所で勤務経験がある、沖縄大学の山野良一教授に話を聞いた。

野田と札幌の事件には共通点がある

「野田の事件は児童相談所の過失が問われる象徴的な事件でした。児相職員だった者として何をしていたのかと言いたいです。一方、札幌の事件では、48時間以内に安否確認を行い、場合によっては立ち入り調査を実施する『48時間ルール』を守っていなかったという報道があります。

 確かに児相は親子に会えませんでしたが、警察からの情報で“虐待はない”と判断していました。児相職員が同行できていたら、子どもの安全が確保できたのかという点は検証すべきです」

 札幌の事件では、実母は18歳で出産。シングルマザーとして札幌・ススキノで働きながら育児をしてきた。子育てに悩みを抱えるなかで、交際相手ができる。'10年7月に発覚した大阪市で発覚した2児置き去り死事件でも共通するものがある。それは、シングルマザーであり、不安定な仕事についていたことだ。

「札幌と大阪の2つの事件の共通点は、水商売、あるいは風俗で働くシングルマザーと交際相手という組み合わせでした。夜に働きながらひとりで子育てをする女性たちは厳しい状況に置かれています。経済的にも精神的にも、男性に依存しない限り生活が難しい現状がある。さらに相手が暴力的な男性であれば、虐待リスクが増すでしょう。

 こうした事件は過去にも明るみになりました。2人の間にどんなドラマが起きたのか想像させます。すべてがそうではないとしても、児相としてはリスクがあると見立てることが大切です。同時に、児相はどこまで専門的な機関なのか。警察とどこまで違うのかを考えることも必要です」