13年ぶりに“月9”に主演する上野樹里が、東日本大震災で母を失った悲しみを背負いながらも新人法医学者として遺体と向き合い、ベテラン刑事の父とともに死因を究明するヒューマンドラマ『監察医 朝顔』(フジテレビ系 月曜 夜9時~)。プロデューサーが明かす上野の役にかける思い、現場でのエピソードとは──。

原作のエッセンス
被災地訪問と役作り

 上野樹里がヒット作『のだめカンタービレ』以来、13年ぶりに“月9”に主演。原作は同名漫画(原作・香川まさひと、漫画・木村直巳、監修・佐藤喜宣)。上野は結婚後、初めての主演作に意欲を見せ、こうコメント。

「“死”をテーマにした作品ですが、同時に“生きる”こと、“過去”を背負いながら“未来”に向かって前向きに生きていく姿をお届けできたらと思います」

 上野が演じる主人公の朝顔は、新人法医学者。死因を解明し、遺体の“生きた証”を見つけだしていく。ときには法医学者としての仕事の範囲を超えて懸命に、真摯に遺体に向き合う。そんな朝顔に寄り添うのは、時任三郎が演じる父であり、ベテラン刑事の平。朝顔は解剖で、平は捜査で、遺体の謎を解き明かしていく。

 そんな父娘は、8年前の東日本大震災で、朝顔の母(石田ひかり)が被災し、いまだに遺体が見つかっていない。つらい経験を経て、朝顔は誰かの“生きた証”を見つけだす法医学者の仕事に就いたのだ。原作漫画の朝顔はロングヘア、朝顔の母が被災したのは阪神・淡路大震災など今作では変更点もある。

原作の先生方にお会いしたとき“作品のエッセンスをわかっていただければ、自由に表現していただいてけっこうです”と、寛大なお言葉をいただきました。ですから、作品を読んだときの印象を大事にしながら制作しています」

 こう語るのは、今作が初のチーフとなる金城綾香プロデューサー。

「朝顔役は、圧倒的な演技力のある上野さんに演じていただきたいと思いました。上野さんは撮影前に法医学の勉強、解剖室の見学のほかに、陸前高田に行き、震災で家族を亡くした方のお話を伺ったり地元の人と食卓を囲んだりして、役作りに取り組んでくださいました。

 平役は、私が新入社員のときに『TOKYOエアポート〜東京空港管制保安部〜』で、ご一緒させていただいた時任三郎さんと思いました。朝顔の恋人役の風間俊介さん、上司役の山口智子さんや板尾創路さんたちにお願いしました。上野さんを軸に、どなたに演じていただいたら素敵か考えながらキャスティングをして、ご快諾いただきました」(金城P、以下同)

 小児科病棟を舞台にした『グッド・ドクター』を手がけた際の取材で、医師に聞いた話から“死”と向き合うテーマの作品を制作したいと思ったという。

「朝顔のもとに運ばれてくる“ご遺体”は、残念ですがもう助けることはできません。それでも法医学者の朝顔は、亡くなった方が最後の最後に、伝えたかった思いを見つけようと、丁寧に死因を調べたり最後の状況を探ったりするんです。そんな真摯な態度、手の温かさは、病気を治療する医師と通じるものがあると思うんです。人の死を描くので、どうしても悲しみは残りますが、自分が生かされている幸せを感じ、周りの人に対してやさしい気持ちになっていただけたらうれしいです」