混ざり合う境界線

 アナログからデジタルへと時代が変わっていく中、これからの『都市伝説』のありようについて、金菱さんは、

世界が変わってきても、なくなることはないと思います。それどころか、今まで以上にフェイクニュースである『都市伝説』と、ファクトニュースの境界がわかりにくくなるのではないでしょうか

 確かに今は画像や音声を自由に、しかも簡単に変えることができる。今まではニュースを発信するのは、テレビや新聞といったメディアに限られていたが、個人で世界中に情報を発信することもネット社会なら可能だ。そうなると情報の受け手は、事実を確認する術がなくなる。 

「社会学で『予言の自己実現』というものがあります。これはウソの情報に飛びつくことによって、それが本当になってしまうことなんです。例えば、銀行の取りつけ騒ぎ。

 “銀行が危ない”という噂が出たとき、たまたま多額の貯金を下ろしている人を見たら、周囲の人が“あの話は本当では”と、1日で何億円も下ろしてしまう。フェイクがファクトになりうる。

 荒唐無稽に見える『都市伝説』も、ネット社会の中ではどんな変化が起こるかわかりません

金菱清さん
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 そして、人から人へ伝わる力について、金菱さんはこう続ける。

こういう話は、誰かれかまわず話すより“ここだけの話だけど”とこっそり話しているほうが広まるんです。この人は自分だけに秘密を話してくれるほど、信頼してくれている、と思いますよね。そんな人が話すことだから信じよう。そして、話を聞いた人が同じようにほかの人にも“ここだけの話”で広めいく。

 こうして、いろいろ細部が変わりながら伝播されていくわけです。『都市伝説』は心理的な感染現象ですよ


《PROFILE》金菱清さん ◎社会学者。東北学院大学教養学部地域構想学科教授。東日本大震災関連の書籍『呼び覚まされる 霊性の震災学』(新曜社)の編者として注目される