芸能界トップに上りつめたマツコのジレンマ

 マツコがゲストのひとりとして賑やかしで出ているのなら、この作戦は有効でしたが、冠番組を持つようになると、難しくなってきます。トップの立場の人が「ブスね」「バカね」と出演者に言うと、ハラスメントになってしまうことがあるからです。

 #MeToo運動以降、テレビもパワハラやセクハラには気を遣うようになっています。毒舌は期待されるけれど、ハラスメントになってはいけない。これがマツコの抱えるジレンマではないでしょうか。

 現段階ではバッシングになっていませんが、マツコの抱える最後の火種は、高額な所得です。『女性自身』(光文社)がマツコのギャラが4年で1本30万円から500万になり、芸能界最高額になったと報じています。

 あれよあれよという間に芸能界の中枢に上りつめ、庶民には理解できないほどの高額所得者となったマツコ。ネットの書き込みでは、「庶民派のふりをして、権力者だ」というものがありましたが、芸能界で売れたら尋常じゃないおカネを手にすることができるのは、周知の事実でしょう。逆に、これだけ数字を持っているのに庶民たれ、というリクエストのほうが、身勝手ではないでしょうか。

 立場が変われば、言動や交際範囲が変わるのは当たり前のことです。ましてや、マツコは今、多数のCM契約を抱えていますから、テレビに出だしたころと同じではいられないでしょう。

 テレビに出始めのころ、マツコは「私のような者がすみません」と一歩下がる態度をとっていました。それは共演者に対する新人なりの仁義、かつLGBTを見たことがない視聴者への気遣いだったのかもしれませんが、その謙虚な態度が毒舌をうまく中和させていた部分があると思います。しかし、その作戦はもはや使えません。

「毒舌で面白い」「面白いけれど、主役ではない」というおネエタレントの既存のイメージをマツコ自身が刷新することができるのか。マツコは大きな分岐点に立っているのかもしれません。


プロフィール

仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ。会社員を経てフリーライターに。『サイゾーウーマン』『週刊SPA!』『GINGER』『steady.』などにタレント論、女子アナ批評を寄稿。また、自身のブログ、ツイッターで婚活に悩む男女の相談に答えている。2015年に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)を発表し、異例の女性向け婚活本として話題に。好きな言葉は「勝てば官軍、負ければ賊軍」。