多くの情報番組、バラエティー番組でメインMCを張るのは男性芸能人です(女性芸能人がメインMCの番組は、数えるほどしかありません)。男性アナウンサーが毒舌を吐けば、メインMCの男性が「生意気だ」と気分を害してトラブルになるかもしれません。しかし、女子アナが毒を吐いた場合、男性芸能人は女子アナという異性を前にすると、異性故にどう叱ったらいいかわからない、もしくは叱って嫌われたらどうしようと躊躇(ちゅうちょ)する場合もあります。

「美人は内面もよい」というバイアスのかかった男性MCや視聴者の場合、毒舌を「頭がいい」「面白い」「大物だ」とポジティブ変換することもあるでしょう。本人にそのつもりがなくても、女子アナの毒舌キャラは「女性だから」「美人だから」という理由で許され、守られているケースもあるのではないでしょうか。

 その辺りの機微に気づかないと、「私は面白い!」「もっと過激なことを言ってやる!」と女子アナ側がヤバいやる気を加速させてしまうのだと思うのです。

後ろ盾のある人が毒舌を語るのは、ムシがいい

 今でこそ、『さよなら!ハラスメント』(晶文社)を上梓(じょうし)し、ハラスメントNOの最先端に立って旗をふる小島慶子ですが、かつて『ごきげんよう』(フジテレビ系)に出演した際、司会の小堺一機の髪を見て、「あれ? また減りました? 髪の毛」と指摘したことがあります。

 のちに小島はツイートで反省の言葉とともに《使い古された「ハゲネタ」を言って、バラエティが分かったつもりになっていました。こういうのがウケるのだろうと思い込んでいました(原文ママ)》と説明していましたが、毒舌ウリしている女子アナは、周囲に甘やかされた結果、自分に甘かったり、無神経になってしまう部分があると思うのです。

 毒舌ウリしている女子アナを甘やかすものは、職場の男性だけではありません。背後にあるテレビ局という組織です。

 冒頭の弘中アナのにゃんこスターに対する「なわとびを跳ぶ人」発言ですが、仮ににゃんこスターがこの発言を不快に思っても、弘中アナに抗議をすることはできないでしょう。なぜなら、弘中アナに抗議をすることは、テレビ朝日に文句を言うのと同じ行為だから。よっぽどの大物は別として、タレントはテレビ局からお声をかけてもらう立場ですから、そこの局アナにも丁寧に接するはず。弘中アナの毒舌が面白いと言われたのは、一緒に組む芸人が気を遣って面白くしてあげている可能性もあるのではないでしょうか。

 そもそも、大組織という後ろ盾をもった人物が毒舌を語るのは、ちょっとムシがいい話ではないかと思うのです。自分も返り血を浴びる覚悟のあるポジションでないと、ただの「上から目線の人」ではないでしょうか。

 弘中アナが真の毒舌家か、それともヤバい女子アナなのか。それは彼女がフリーになったときにわかることかもしれません。


仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ。会社員を経てフリーライターに。『サイゾーウーマン』『週刊SPA!』『GINGER』『steady.』などにタレント論、女子アナ批評を寄稿。また、自身のブログ、ツイッターで婚活に悩む男女の相談に答えている。2015年に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)を発表し、異例の女性向け婚活本として話題に。好きな言葉は「勝てば官軍、負ければ賊軍」。