──妹さんの倉持知子先生や、多田かおる先生、聖千秋先生ですよね。

 みんなでお手伝いしあってましたね。今でも聖先生とはいちばんの仲よしで、こんなに長いおつきあいになるとは思わなかった。今の作品(『スパデート』)もノリにノッていて面白いです。

──いくえみ綾先生のペンネームはくらもち先生の作品のキャラクターの名前から取られてるんですよね。昨年は2人展も開催して大盛況でした。

 歳は7つくらい離れてますね。もうこれくらいの歳になると差はあまり感じない。お互いよく生き残ってきたなあって、そんな同志みたいな感じです。

少女マンガを描くということ

──振り返るとあっという間ですか?

 そうですねえ…。45周年のときだったかな? 2人展やりませんかっていくえみ先生に言われて。そのときの正直な感想がまだ45年なのかと。以前にちばてつや先生が50周年を迎えられた時に、50周年か、私はそこまでやれないだろうな、って思っていたらあと2年(笑)。だから50周年になったら自分でお祝いしてもいいかなと思っています。

──現在の連載は『ココハナ』(※8)でのエッセイのみですが、今はネタを仕込んでいる状態でしょうか? 『花に染む』が長かったですものね。

 そうですね。『花に染む』が終わって私は矢吹丈になったんで、しばらく描けない! 白い灰だよ! ってみんなに言って回ってましたね(笑)。

──でもまたお描きになろうとしている(笑)。宮崎駿監督が引退宣言を撤回して新作を製作中ですが、同じような状態でしょうか?

 あの気持ち、本当にわかるんです! やめるっておっしゃっていたのに、でもすぐに描かれて。その心の動き方、とってもよくわかるんです。

──生みの苦しみはやはり強いストレスなのでしょうか。

 連載中は休んでいても、最終回になるまでは心底からは休めない。ずっと責任みたいなものを抱えているんです。きちっと自分の納得のいくところに着地させないといけないという、その緊張がずっと続いてるんですね。だから連載が長ければ長いほど、自分が思ったところにいけるかどうか、ずーっと少しずつ神経がすり減ってる感じなんです。笑ってたり、遊んでたりしても。

──ラストはあらかじめ決めてから描くのでしょうか。

 ある程度決まってますね、そこにいくにはどうやったら読者に喜んでもらえるだろうかって。走りながら考えてます。大変なんです。

──新作も少女マンガでしょうか?

 自分の環境次第ですね。これが少女マンガだと思えば少女マンガになっちゃうのかなって思いますし。

──くらもち先生が「少女マンガ」というときの定義は?

 実は自分の中では少女マンガの定義って作っていないんです。たぶんまわりの方が決めてくださってるんだなって。できあがったものが少女マンガだって言われたら、まぁそうなのかなって。

──くらもち先生こそが少女マンガなのだと思います!

 そうですか(笑)。そういうふうに言っていただけると、少女マンガ家冥利に尽きますね。


《PROFILE》
くらもちふさこさん ◎1955年、東京生まれ。『別冊マーガレット』などで少女たちの心に残る名作を数多く描き、多くのマンガ家からも敬愛されている。代表作に『いつもポケットにショパン』『天然コケッコー』など。2017年、『花に染む』で手塚治虫文化賞「マンガ大賞」受賞。

(※1)24年組…昭和24年ごろに生まれた萩尾望都、竹宮惠子、大島弓子、山岸凉子らを表す総称。従来の枠組みにとらわれない作品を発表、少女マンガの新時代を拓いた。
(※2)萩尾望都…今なお圧倒的な作品を作り続ける少女マンガ界の生ける伝説。代表作に『ポーの一族』『トーマの心臓』など。
(※3)『くらもち花伝』…くらもち先生の初めての自伝。集英社インターナショナルより大好評発売中。
(※4)青木俊直…マンガ家。『ウゴウゴルーガ』のキャラクターデザインなどでも知られる。
(※5)『いつもポケットにショパン』のお母さん…娘には冷たく厳しいように見えるが、それだけではない優しさや娘を思う気持ちが人一倍強いキャラクター。
(※6)『海の天辺』の山崎先生…主人公が恋する男性教師と恋仲にあった年上の女性教師。主人公をひとりの女として対等に扱い、大人の女性として振る舞うさまがとてもカッコいい。
(※7)『DQウォーク』…9月にリリースされたドラクエのスマホゲーム。実際に歩きながらドラクエ世界を楽しめることで話題に。
(※8)『ココハナ』でのエッセイ…『とことこクエスト』。『ココハナ』は毎月28日ごろ発売!