子どもの世界を理解できていない

「教師は“いじめが起きてはいけないこと”と考えます。そうなれば隠蔽したくなる。特に小学校では、自分のクラスは1人で責任を持つ考えが強く、相談しにくいのです」

 いじめを解決するにはどうすればいいのか。その前提として、加藤准教授は「問題をオープンにすること」を重視する。

「教師がひとりで抱え込まずに、学年集団や学校全体で共有し、対応することが大切。まずは子どもの間でいじめは必ず起こると思い、学校内でオープンにして共有することです。

 いじめの解決には、クラスのみんなが平等であると確認し、民主的に意思決定する工夫が必要です」

加藤准教授は、いじめの解決には、学校が「民主的で開かれた場」であることが必要と指摘
加藤准教授は、いじめの解決には、学校が「民主的で開かれた場」であることが必要と指摘
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 ただ、いじめがわかったとしても、指導の際に事実確認を怠るケースも少なくない。これでは問題を複雑化させてしまう。

「教師が指導するとき、“子どもはこうあるべき”との先入観が入り込みやすい。しかし、事実確認の際にこうした考えがあると、教師にとって都合のいいことしか見えません。事実の確定と、どう指導すべきかは別です」

 また、指導の際に必要な「子どもの世界」を教師が理解できていないというケースも目立つ。

「管理主義は過剰に児童・生徒を統制しますが、一方で、一見しただけではわからないことは気にせず、見落としがちです。それでは子どもたちの心の中に入っていけません

 例えば、被害者にいじめられていないかと聞いても、否定することがあります。ちくったとわかると、さらに子ども集団から排除されるからです。無記名アンケートにするなど工夫が必要です」