このスタンスはビジネスシーンにおいても同様。組織に属しているのなら、たとえリーダーであるとしても、「グループをベースにして個人に生かす」というスタンスを見せなければ、どんなに個人スキルが優れている人でも、社内外において支持を集めることは難しいものです。

「活動休止」の新たなパターンを見せる

「SNSについてジャニーズ事務所の他グループへの波及は?」と聞かれたときの回答も、示唆に富んでいました。

 まず櫻井さんは、「『波及がない』とは言い切れないと思いますけど、各グループの思いもあると思いますし、『われわれがやったから他の全グループがやる』というものでもないと思います。それぞれの思いと判断だと思うので、『少しドアを開いておく』という感じでしょうか」と、周囲に配慮しながら考えをまとめた“落としどころ力”を感じさせるコメント。

 一方、楽曲のデジタル配信について聞かれた松本さんは、「ジャニーズには素晴らしい先輩後輩がたくさんいます。僕らは期限が決まっています。だからこそできるチャレンジもあると思っています。僕たちがやってみることで得る経験をジャニーズに還元すること。それが、僕らができる恩返しだと思っています」と熱っぽく語りました。謙虚でありながら、力強い言葉で人々の心を動かそうとする“メッセージ力”が松本さんの持ち味であり、実際に会見でも最も多くの言葉を話していたのです。

 さらに松本さんは、「『なるべく大きなムーブメントになるように精一杯やっていけたら』というところですね。自分たちとしてもやったことがないですし、ジャニーズ事務所としてもやったことがないことが多々あって。やりながら軌道修正して『何がベストか?』を探りながら楽しんでいけたら。何より楽しんでいくことを、この5人だったら……“チーム嵐”だったら、楽しんでできると思っています」とコメントしました。

 この言葉から推察されるのは、「アイドルグループとして1つのあり方を見せたい」「活動休止する際の1つの方法を確立したい」という思い。近年、ジャニーズ事務所のアイドルたちがアラフォー世代に入り、「自分が望む芸能活動との乖離」「結婚などプライベートの不自由」などの問題から、グループを抜けたり、退所したりなどの新たな道を選ぶケースが増えています。

 そうした背景を踏まえて松本さんの思いを深読みすると、「僕たちはグループ全員で楽しみながら活動休止する姿をファンに見せたいと思っています」「やったことがないからうまくいかないこともあると思うけど、そういう姿も含めて参考にしてもらって、自分のグループにとってのベストを見つけてほしい」。残りの時間をファンと近い距離感で盛り上がり、笑顔の中で見送られ、「いつかまた会える」と思わせる……そんな希望に満ちた活動休止の新パターンを作ろうとしているのではないでしょうか。