人に尽くせない人はダメ

 日本での主な活動は、滋慶学園グループの美容専門学校での特別授業やハリウッドの俳優専門のファンデーション『Star of the color』と自身が企画・デザインしたファッションウイッグ『KNTファッションウィッグ』を紹介すること。

「アメリカの女性はウイッグで気軽にヘアスタイルを変えておしゃれを楽しんでいるの。気に入った髪型だからってずっと同じじゃなくていいのよ。装いに合わせてウイッグを朝晩取り換えていいの」

父の故郷、青森市の観光大使も務める。4年前から毎年ハリウッドクリスマスパレードにねぶたが参戦、人気が高まっている。「みんなが“ラッセラーラッセラー”ってかけ声をかけてくれるのがうれしいの!」とカオリさん 撮影/伊藤和幸
父の故郷、青森市の観光大使も務める。4年前から毎年ハリウッドクリスマスパレードにねぶたが参戦、人気が高まっている。「みんなが“ラッセラーラッセラー”ってかけ声をかけてくれるのがうれしいの!」とカオリさん 撮影/伊藤和幸
【写真】若き日のブルース・ウィルスとの貴重なツーショット

 加齢や病気による薄毛の悩みを解決したいという思いも込められている。その収益の一部はロサンゼルス在住の日系人の敬老引退者ホームなどに寄付してきた。

「寄付はお金があってもなくてもします。ないときに家を抵当に入れて銀行から借りて寄付していたこともあります。会計の人に、寄付というのはお金がある人のやることで、利子を払ってするのはあなたぐらいだと言われたんだけど。父も母も自分のしてほしいことを人にしてあげなさい、人に尽くさない人はダメだっていう教育だったから。

 みんな私の家とか私のお金っていうけど、それは預かり物でしかなくて、それをどう使うかはその人次第でしょう。死ぬときお金を持っていける人はいないんですよ」

 最近ロサンゼルスで日本人のホームレスが増えてきたことが気になると話す。生活が逼迫し、日本に帰るあてがない人々が教会のそばに身を寄せているという。

「日本人のホームレスは出したくないですね。私は85になってもまだ稼いでいられるから、そのことをまず神様に感謝して、やれることをやりたいなと思っているの」

 ただ外国でひとり暮らしをする心得として、自分の死亡時に人に迷惑をかけないための準備は蓄えているという。

「日本は火葬だけど、向こうはそのまま入るから、お棺がいちばん高いのよ。もうお墓を掘る費用も支払ったから安心よ」

 東京では姪の奈良ひろみさん(58)と一緒に過ごす。子どものいないカオリさんと両親を早くに亡くしたひろみさんは母娘のように距離が近い。

叔母だってふだん何もしないと、それなりのおばあちゃんなんですが、人前に出るときはしっかり身だしなみを整えて、やはり違うなと思います。“女”なんですよ。足の爪までキレイに塗ってますからね。男性から見てもチャーミングのようですよ。一緒に居酒屋へ行って、叔母がナンパされて、娘さん帰っていいからって言われたことありますし。

 80歳までに再婚するって公言してたんですが、1歳でも年上の方がいいと言ってたら、みんな死んじゃったのよと。この際、年下でもいいわなんて言ってます。人を楽しませるつもりで言っているのか、本気なのかわかりませんけどね(笑)」