世は、ナンパ戦国時代。出会いのプラットホームの増加とともに、都会を中心に男女の出会い事情はカジュアル化している。その最たる東京の週末に、ナンパ前線に立つ男性は何を考え、なぜナンパするのか。3回目の本稿もフリーライターの三九二氏があえてナンパされてみた。

 今回、ナンパイケメンに遭遇した街は世田谷区・三軒茶屋。東京の「住みたい街ランキング」でも毎年、上位に名を連ねる人気の街。

 とはいえベッドタウンとしての印象が強いというわけでもなく、駅前は人も多く賑わっている。商店街やおしゃれなコーヒースタンド、バル風の飲食店も多く、近所ですべてが完結する、それが通称・三茶、三軒茶屋のいいところだ。

 渋谷や恵比寿などからもタクシー、自転車圏内ということもあり、交通の便のよさからも人気のある街だ。そのせいか、三茶にひとり住まいしている若者は社交的で遊び人なイメージも……。

アラサー男もポップにする街

 三茶のナンパスポットといえば、駅前にある商店街の奥に存在する「三角地帯」というディープなスポット。昔からある飲食店も多いのだが、細い路地には、ところせましと居酒屋やスナックが並び、雰囲気は新宿のゴールデン街のような感じだ。

 そんな三角地帯で今回、声をかけてきたのは、三茶らしいスタイリッシュな「スケボーボーイ」。

 彼と出会ったのは三角地帯のはずれにある若者向きのバー。なんとここのお店、“お通し”がアルコール度数の高い「イエーガーマイスター」のショットなのだ。しかも飲み放題。土曜日の午後11時、入店すると店内は若者であふれていた。

 さっそく“お通し”で乾杯していると、入店から10分くらいで彼から声をかけられた。

「おねーさんたち、なんか歌いません?」

 実はこのバーにはカラオケがついており、店内をジャックして歌える、“スナック風カラオケ”なのだ。好きな曲を歌っている人がいると、それがきっかけで仲よくなり、お酒を飲みながら共通の音楽の話をする。こういった形式のバーが最近ではブームになりつつある。

通称「三角地帯」 撮影/三九二汐莉

 デンモク(電子目次本)をさらりと渡してきたスケボーボーイは30歳前後といった雰囲気。178センチくらいの高身長に、キャップのつばをくるりと後ろに向けてかぶっている。ゆるめのグレーのトレーナーに、オリーブ色のワークパンツ。ちょっと男くさい格好を、本人の甘いマスクでうまく調和している。……イケメンだ。

 見るからにポップカルチャーなアラサーというのも、また三茶らしい風情があっていい。カラオケで何を歌おうか悩んでいるところに、自然と男性たちがグループの輪に入っており、気づくと隣の席に彼がいた。

 検索履歴にはニルヴァーナやボン・ジョヴィなどが並んでいたが、スケボーボーイと一緒に歌うことになったのはディズニーソングだった。思ったより美声で、歌い慣れているところにイケメンの余裕を感じたのだった。