もはや詐欺を越えた犯罪 【アポ電強盗】

 オレオレ詐欺がさらに凶暴化したのが、ここ数年、相次いで起こっている“アポ電強盗”。アポ電とはアポイントメント電話の略。

「犯人が親族、役所の職員などを装って、自宅にある現金など資産状況を事前に電話で聞き出すことから、この名がつきました」

 例えば、銀行員を装って電話をかけてきて、

「●●さんの銀行口座が流出している可能性が考えられます。口座が凍結されるおそれが。ご自宅に金庫など現金をおいておける場所はありますか?」

 など、言葉巧みに現金の保管場所や預金情報などを聞き出していく。そして現金や金品のありかを知ったうえで強盗に押し入る。

詐欺犯の中でも過激な者たちが、お金をダマし取るよりも、直接奪ってしまったほうが手っ取り早いと、犯行に及ぶのでしょう。ただ、犯人側からするとリスクの高い犯罪です。警察に捕まりやすいし、受け子などに比べて罪も重い。それでもアポ電強盗は減る気配がないんです」

 ダマされるだけでなく、命まで危険にさらされてしまうのが、アポ電強盗の恐ろしさだ──。

 ソンしたくない気持ちをあおる 【還付金・年金詐欺】

 市区役所、社会保険事務所、年金事務所などの職員を装い“医療費の還付がある”“年金の未払いがある”という電話がかかってくるのが始まりだという。

「トクをしたいという人間の欲求をついてくるんです」

 お金がもらえるといううれしさで気が緩んだところへ、「期限は今日まで。すぐに手続きしてください」と焦らせ、携帯電話を持ってATMに行くよう誘導する。そして操作方法を指示し、本人の口座から犯人の口座に現金を振り込ませてダマし取る。最近は、携帯電話で話しながらATMで操作することを禁止する銀行が増えているため、ショッピングモールや無人のATMを指定するケースが多いという。

「“銀行のATMではダメですか?”と聞くと、“これは特別な手続きだから”と説得される。人の心理として、わからないことは専門家の言うことを聞く傾向があります。つまり還付金のことやATMの操作がよくわからないので、専門家である社会保険事務所の人=犯人の言うことに従ってしまう」