行政書士・ファイナンシャルプランナーをしながら男女問題研究家としてトラブル相談を受けている露木幸彦さん。今回は、交際中の男性の元妻から嫌がらせを受けたトラブル事例を紹介します。(後編)

 相談者の平良(たいら)薫さんは同じ会社に勤める比嘉幹介氏と交際中。薫さんは幹介氏の離婚後に交際を始めたので問題はないはずだが、元妻は二人の関係を不倫だと言い、「主人と別れろ」という嫌がらせのLINEが昼夜問わず送られてきて悩んでいる。幹介氏と元妻の間には16歳の息子がいるが、その息子の高校中退も薫さんのせいだと言わんばかり。さらに、幹介氏と薫さんが上半身裸で寄り添う写真を見つけた元妻は、薫さんが幹介氏と別れないなら、会社の部長に写真を送りつけ、ネットにバラまくと騒ぎだし……。

(前編はこちら)

<登場人物、属性(すべて仮名)>
平良薫(39歳。幹介の彼女)会社員 ☆相談者
比嘉幹介(46歳。恵の元夫)会社員
新垣恵(44歳。幹介の元妻)無職
新垣洋介(16歳。幹介と恵の長男)フリーター

元妻の4つの行動は明らかに法律違反

「あんたのせいで家庭を壊されたんだから、どんな報いも受けるべきでしょ? 慰謝料……そうね、500万円くらい払えるでしょ? バラされたくないんだったらね!!」

 元妻は復讐をやめる条件として幹介氏との関係解消だけでなく、慰謝料の支払いも求めてきたのです。二人が正式な形で交際を始めたのは「離婚後」です。薫さんが夫婦の結婚生活を壊したわけでもなければ、彼との関係は不倫ではありません。それなのに薫さんは元妻に弱みを握られており、交渉の主導権は元妻が持っています。上半身裸の二人の写真を会社の部長をはじめ、ネット上にまで流出させられるのを防ぐためには、元妻の言うとおり、彼と別れたうえで多額の慰謝料を支払うしかないのでしょうか?

 筆者はこのような状況に陥った薫さんから相談を受けましたが、それまで元妻が行ってきた行為は単なる嫌がらせや迷惑、「私刑」という域を超えており、法律に違反していることは明らかだと伝えました。具体的に元妻の行動の何がどの法律に違反するのかは以下の4つです。

 1つ目は「夫婦の離婚が成立しているにもかかわらず、元妻が元夫の交際相手に対して関係解消を強要する行為」です。未婚者には交際の自由が認められています。離婚を経験しているとはいえ幹介氏は現在、独身なので薫さんと交際することに何ら問題はありません。さらに、薫さんが幹介氏と離婚前から交際していたと元妻に決めつけられ、交際の自由を否定される筋合いはないのです。

 つまり、元妻は薫さんに対して元夫と関係を解消するよう求めることができる立場ではありません。具体的には「とにかく主人と別れなさいよ!」というLINEのメッセージですが、これを正当化する根拠はありません。このように根拠のない請求を繰り返すことで相手方に精神的苦痛を与えた場合、法律上は脅迫罪(刑法222条、2年以下の懲役もしくは30万円以下の罰金)に抵触する可能性があります。

 2つ目は「性的関係が記録されている写真を公開する行為」です。元妻は薫さんと彼の性的関係が記録された写真を持っていること、そして会社の部長に写真を送りつけるとLINEのメッセージを送ってきました。このようなわいせつな写真を第三者に閲覧させた場合、わいせつ物頒布等罪(刑法175条、2年以下の懲役もしくは250万円以下の罰金もしくは科料)に抵触する可能性があります。