離婚しても元夫は息子の父親であることに変わりない

 このように薫さんが毅然(きぜん)とした態度をとることができたのは、元妻が赤の他人だからです。ただでさえ幹介氏から元妻の悪口や不安、愚痴を聞かされていたので元妻の印象は悪いし、彼に捨てられた元妻の気持ちを慮るつもりもなく、むしろ自業自得だと思っているくらいでした。そのため、元妻をなるべく傷つけないよう配慮する必要はありませんでしたが、幹介氏は違います。離婚したら夫婦は他人ですが、息子さんの父親、母親であることに変わりはありません。

 今回の場合、心配なのは元妻と一緒に暮らす息子さんです。息子さんは性格形成に大事な思春期に高校を辞め、フリーターになりました。元妻は薫さんへの復讐がかなわなかったので、怒りの矛先を息子さんに向けることが予想されます。例えば、元妻が「女と結託して慰謝料を踏み倒した最低な父親」だと息子さんに吹き込んだ場合、息子さんは精神的に不安定になり、自室に引きこもり、アルバイトすら辞めてしまう可能性もあるからです。

 離婚成立から半年後、ようやく自宅を売却することができたので、幹介氏と薫さんは晴れて一緒に暮らし始めたのですが、突然、彼の顔が青ざめる瞬間を何度か目撃したよう。元妻は薫さんへの嫌がらせはやめましたが、彼に対して続けているのではないかと心配せざるをえませんでした。薫さんは気になるものの、彼の機嫌を損ねたくないので聞けずにいるそうです。

 元妻が薫さんに“やり返された”と根に持たず、きちんと反省し、何の罪もない息子さんに悪影響を与えないように暮らすことを願うばかりです。


露木幸彦(つゆき・ゆきひこ)
1980年12月24日生まれ。國學院大學法学部卒。行政書士、ファイナンシャルプランナー。金融機関の融資担当時代は住宅ローンのトップセールス。男の離婚に特化して、行政書士事務所を開業。開業から6年間で有料相談件数7000件、公式サイト「離婚サポートnet」の会員数は6300人を突破し、業界で最大規模に成長させる。新聞やウェブメディアで執筆多数。著書に『男の離婚ケイカク クソ嫁からは逃げたもん勝ち なる早で! ! ! ! ! 慰謝料・親権・養育費・財産分与・不倫・調停』(主婦と生活社)など。
公式サイト http://www.tuyuki-office.jp/