現場ではそのネタはそこまでウケていなかったのだが、一緒にこのライブを見ていた業界関係者も「あのコンビは売れるかもしれない」と言っていた。私もその衝撃をTwitterで書き残したところ、その女性本人から「なんかよくわかんないけど、アタシめっちゃ褒められてんじゃね?」というような内容のコメント(引用リツイート)が来た。彼女のタイムラインを覗いてみたところ、どの書き込みも期待を裏切らない軽薄さに満ちていた。

 その女性芸人こそが後のフワちゃんである。彼女はかつて芝山大補という芸人と「SF世紀宇宙の子」というコンビを組んでいた。だが、フワちゃん自身の話によると、彼女には芝山の作るネタを的確に演じるための表現力が不足していたのだという。そのせいでコンビとしての活動は行き詰まり、解散することになった。

YouTubeで才能発揮

 ピン芸人になったフワちゃんはYouTubeという新しい表現手段を見つけて、そこに徐々にのめり込んでいった。もともとInstagramでも自ら加工した「笑えるバカバカしい画像」をアップし続けていた彼女は、映像編集にも同じような楽しみを見出した。

 明るさ、勢い、行動力、ファッションや映像のセンスなど、YouTubeの世界ではフワちゃんという人間の本来持っている強みが存分に生かされた。フォロワー数はどんどん増えていき、いつのまにか人気YouTuberの仲間入りを果たしていた。

 YouTubeと並んで、フワちゃんが覚醒するもう1つのきっかけになったと思われるのが、新しい髪型と衣装に出会ったことだ。現在のフワちゃんのトレードマークと言えば、お団子ヘアと派手な色のスポーツブラである。

 初めてそのスタイルを試したのが、インターネットテレビの企画で台湾に行ったときだった。ロケのために目立つ格好をしようとして、髪型と衣装を変えてカメラの前に現れた。そこで初めて今の見た目になったのだ。性格などは特に変わっていないのだが、見た目と中身が一致したことで、キャラクターが伝わりやすくなった。