説教の矛先は「自身」にも

 矢部の説教の矛先は、岡村の周囲にも向く。今は岡村ひとりでやっているこの番組は、以前はナイナイの2人で務めていた。そのころから数えると、同じ時間枠での放送はすでに26年を超えた。

 気心が知れたスタッフに囲まれ、リスナーからは愛され、ラジオは岡村の「ホーム」になった。そこに甘えがあったのではないか。岡村だけではない。岡村の今回の発言を許す雰囲気が、番組のスタッフに、そしてリスナーにあったのではないか。

「リスナーも含め、これはもうスタッフ含めですよ。全員がそうしたんですよ」

 さらに、矢部の説教が向く先がもうひとつあった。ほかならぬ自分自身だ。

 コンビとしての矢部と岡村の関係は、元々とてもドライなものだった。仲が悪いわけではないけれど、プライベートで会うことはない。2人で飲みに行くこともない。あくまでも仕事上の関係。だが、仕事にしても、2人だけで話し合いの機会を持つことも、もう随分ない。

 こんな淡白な間柄について、矢部は以前から「俺が作った空気だと思う」と語っていた。岡村が自分から離れていったのではなく、自分が岡村から離れていったのだ、と(テレビ西日本『華丸・大吉25周年記念 祝いめでたSP』2015年12月1日)。

 今回のラジオで矢部は、岡村の発言に疑問を覚えつつも流してきた自分について、繰り返し悔やむように語った。岡村が「白旗あげるんか」と女性を敵視するような発言をしたとき、自分は取り合わずに流した。岡村がマタニティマークについて「あれいる?」と言ったときも、自分は流した。

 ナインティナインの楽屋はあるときから、矢部の希望で別々になった。それを岡村はよく「相方が自分に飽きたから」と説明してきたが、そうではないと矢部は明かす。

 飽きたからでも、ましてや嫌いになったからでもない。楽屋でスタッフにコーヒーを入れてもらって「ありがとう」のひと言もない、そういうあなたを見続けて、これからあなたを嫌いになるのが怖かったからだ、と。

「お笑いコンビの前に人間で出会ってるから。そういうとこ見たくなくて、距離とったとこもある」

 岡村、スタッフ、リスナー、そして自分。矢部の説教の矛先は、相方の問題に気づきつつも目を背けてきた、今回の事態に至るまで問題を遠ざけてきた、そんなこれまでの自分にも向けられていた。