矢部サン自慢の妻は、母としても優秀です。2020年4月9日付の『NEWSポストセブン』の記事によると、矢部サンのお子さんは都内の有名小学校に合格したそうです。女子アナというブランド妻を持ち、妻は愛するお子さんをしっかり教育してくれて、名門校にも合格させてくれる。メリットありありの結婚生活を送っているわけです。

 好意を持っている人や、メリットをくれる存在に優しくすることは、誰にでもできます。ですから、恋愛や結婚をしたからといって、女性蔑視が直るわけではないのです。実際、今回の件で岡村サンが悪気なく侮蔑したのは、自分と直接関わりのない女性でした。

矢部の女性神聖化に潜むヤバさ

 岡村サンをお説教した矢部サンの悪気ない発言にも、ひっかかる部分があります。矢部サンは「結婚して、女性をリスペクトするようになった」と話していました。「妻をリスペクト」と言わなかったのは、家族自慢にならないように、もしくは自分の妻だけでなく、世のお母さんたちみんなもすごいんだという気遣いを込めたとも考えられます。

 2017年の『日経DUAL』のインタビューで、青木裕子は育児分担についてこう語っています。

《1人のときは、ちょっと無理して頑張ると私だけでもできる、みたいな感じだったのですが、2人になると頑張ってもやりようがない。夫に「やって」と言うようになったら、意外と夫もできるんだな、と》
《(現在は)平日休みには積極的に育児にかかわってくれます》

 つまり、最初のお子さんのときは妻のワンオペに近い状態だったけれども、二人めのお子さんが生まれてからは、協力し合っているということでしょう。

 自分が当事者にならないと理解できないことは、たくさんあります。「子どもにも恵まれて、女の人へのリスペクトは増していく」と言ったのは、育児を妻に任せきりにすることもあったことへの反省と感謝の気持ちから生まれた言葉なのではないでしょうか。しかし「結婚して(妻ではなく)女性をリスペクト」というふうに、女性全体を賞賛することは「女性は家庭において、万能である」「家族の不出来は、妻もしくは母親の責任」という女性抑圧の一端を担っているように思えるのです。

 結婚したら女性みんなが、矢部サンの奥さんのように自動的に良妻賢母になれるわけではありませんし、妻がたしなめても、問題発言をする男性はごまんといます。そもそも、女性蔑視をしない独身男性だって、たくさんいます。岡村サンは困窮した女性を、性の対象と見て怒られましたが、結婚や女性を聖なるものとして見なす矢部サンもちょっとヤバいのではないでしょうか。

 矢部サンの発言にインネンをつけるのはこれくらいにして、恋愛や結婚以外で岡村サンが変わるためにはどうしたらいいのでしょうか。それは矢部サンのこんな言葉が参考になると思います。

「ADの女の子は(タレントに)コーヒーを入れて『ありがとう』と言われるとめちゃめちゃうれしいんやて」

 ADの女性に「ありがとう」を言っても、直接的なメリットはないかもしれません。しかし、ADがいなかったら、岡村サンは仕事にならないはずです。ADの代わりはいくらでもいると思うかもしれませんが、それを言うのなら、芸能人だって同じでしょう。

「女性だから」下に見ることはNGですが、「女性だから」といってリスペクトする必要もありません。まずは同じ職場で働く“仲間”として相手を見ること。それがすべての始まりな気がします。


<プロフィール>
仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ。会社員を経てフリーライターに。『サイゾーウーマン』『週刊SPA!』『GINGER』『steady.』などにタレント論、女子アナ批評を寄稿。また、自身のブログ、ツイッターで婚活に悩む男女の相談に応えている。2015年に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)を発表し、異例の女性向け婚活本として話題に。好きな言葉は「勝てば官軍、負ければ賊軍」