SNSの脅威とは

 ごく一部でのみ交わされていたやり取りや情報が、さまざまなSNSを通じて模倣され、爆発的に広がっていくことを『インターネット・ミーム』と呼ぶ。ひとりの発言が、数万、数十万とシェアされていく。投稿を引用し、他の誰かが意見をのせる、それがまたシェアされる。ミームは時として、国や政治の方向性を変えるほどの実行力を持つのだ。

 例えば緊急事態宣言後、国民への支援が、他国と比べて日本は格段に少ないという意見が多く投稿された。布マスクを配る政策などについて不満を感じるという声も大きな流れとなり、政策批判がSNSのトレンドを連日占領。当初の限定的な給付ではなく、国民全員への現金給付制度に変更されることが発表された。

 最初は個人の発言でしかなかったものが、次第に世論のようになっていく。その脅威がひとりの若い女性に向けられたとしたら……。テラスハウスともプロレスとも引き離され、たったひとりで木村さんは戦っていたのかもしれない。

責めることでは何も解決しない

 一連の騒動で、木村さんを誹謗中傷した人々や『テラスハウス』そのものにも非があるという意見も多く散見された。しかし、リアリティーショーで意見を交わすことは、コンテンツの楽しみ方として間違っているとは言い難い。消費者のニーズに合わせてコンテンツを製作していた『テラスハウス』も、圧倒的な悪なのだろうか。人々に希望や楽しみを与える瞬間も過去にたくさんあったように思う。

 結局、ここでまた何かを「悪役」に仕立て上げることでは、世界は何も変わっていない。その行為そのものが、また新たな誹謗中傷を生んでしまうからだ。

 しかし、これだけは知っておかねばならない。たったひとつの何気ないひと言が、インターネット上では大きな波を作り出してしまう可能性がある。そのひと言が大混乱や絶望を招いてしまう危険性があるのだ。

 私たちはこれからも、インターネットと共に生きていく。だからこそ、発言に対し個人で「自覚」を持たなければいけない。それがひとつのインターネットにおけるリテラシー。良い面と悪い面、2つの側面を持つSNSが、平和な世界になっていくためのツールとなってくれることを願わざるを得ない。

PROFILE●ミクニシオリ●フリーライター。『週刊SPA!』(扶桑社)、『mina』(主婦の友社)などで恋愛や婚活、最新の出会い事情について寄稿中。
逆ナンやギャラ飲みなどの現場にも乗り込むサブカル女子。