感染防止の徹底が課題

(5)指定避難所の使用スペースを広げる

 コロナリスク下では、避難者同士の距離を十分にとるため、スペースを広げる必要がある。これまでの体育館中心から、教室中心になることが考えられる。

「1家族あたり6畳程度を割り当て、家族間の距離を十分に取る。四方をパーティションで囲む、4〜6人が入るファミリー向け大型テントを並べるなど飛沫の拡散を防ぐ対策も重要で、プライバシー保護の視点ですでに導入している市町村もあります」

(6)状態別に部屋設定、待機スペースも十分な広さに

 障がい、認知症、基礎疾患、体調不良など、避難者の状態別に部屋を分けるゾーニングが望ましく、入室後に状況に応じ関係機関につなぐ。

 支援情報や安否確認の掲示板、食事配給や支援物資の配布場所、テレビ周辺など、どうしても「密」になる場所での感染防止の徹底が課題だ。入所の受付も、体育館のほか大型テントによる待機所を設けたり、自家用車で待機できる場所を確保し、極力3密状態を避ける必要がある。

(7)感染防止の徹底と、ゾーンごとの手洗い場・トイレ設置

 玄関や靴から入ってくる多量のホコリや粉塵、断水による衛生環境劣化は、避難所につきものの課題だ。タンクからの給水は蛇口の数が限られ、避難室から離れていることもあって手洗いやうがいを怠りがちになる。

 阪神・淡路大震災では発生2か月で口腔衛生の低下などが原因の肺炎で亡くなる人が関連死の4分の1を占めた。室内の清掃と換気はひんぱんに行い、蛇口やトイレはエリアごとに多くの設置が必要。

「災害時はさまざまなストレスが複合的にのしかかり、身体も心も不調になりやすい。子どもたちも含めリラックスできる部屋を設置したり、避難者のストレスが軽減されるような花などの飾りつけ、明るい配色による避難所全体の空間づくりが求められます」

 避難者が主体となって、自治的に避難所運営することがいままで以上に求められる。密集によるコロナ感染リスクが高い中で大災害が発生した際に懸念されるのは、危険が迫っているにもかかわらず避難を躊躇(ちゅうちょ)してしまうことだ。

 近年の豪雨災害では、逃げ遅れや避難拒否による犠牲も目立つ。どこにどう逃げるか、平時からしっかり対策を立てておくことが重要だ。

【いざというときのために備えておきたいものリスト】
●基礎的な生活習慣用品

・歯磨き・歯ブラシ・洗口液(断水時)・ティッシュペーパー・タオル・飲用水・コップ・入れ歯
 →過去の大災害では、口腔ケアがおろそかになったことや入れ歯の紛失で、災害関連死の25%が肺炎で死亡

●健康状態維持
・マスク・アルコール消毒液・常備薬(風邪薬・胃腸薬など)・服用薬・お薬手帳
 →風邪および感染症、持病への対策
・電池式小型扇風機・扇子/うちわ・自動車のシガーソケットを電源にできるインバーター
 →停電時の熱中症対策。大雨暴風状況では窓を開けることができない。車中泊では窓を開けて眠れない
・アイマスク・耳栓・携帯用空気枕
 →睡眠確保がストレスを軽減させ免疫力を上げる

●衛生環境維持
・簡易トイレ・おむつ・ウエットティッシュ・生理用品・ビニール袋(レジ袋)・ビニール手袋・軍手
 →ビニール袋は物や手を汚さないためにも役に立つ。断水時はいったん汚れると洗えない
・携帯コンロ・小さい鍋(調理のほか消毒にも)・箸・スプーン・皿
 →熱源があると簡単な煮炊きができ、布マスク類の消毒も。食器は感染症対策としても各自で所持する必要
・爪切り・耳かき・とげ抜き・絆創膏
 →粉塵や傷から身を守り、ストレスの軽減につながる

●コミュニケーション/行動環境維持
・眼鏡類(老眼鏡、コンタクトレンズとケース)・補聴器・スマホと充電器・小型ヘッドランプ・レインコート・帽子
 →断水状況にある避難所の場合、トイレは屋外に設置されることもある

※上に掲げたような基礎的な生活習慣と健康状態を維持できるもの、衛生環境を保つものは必要だ。また、本やゲームなど、ストレスを感じず時間を過ごせるものもあったほうがよい。大雨のときの避難を考え、持ち出し袋は防水リュックであったり、防止カバーがかけられるものがよいだろう。貴重品や携帯電話は、防水性のある首かけポーチなどに入れ、身につけておくのがよい。