ジャケットでも激しく攻めた。ボディスーツで幼虫をイメージ、そしてオーガンジーの衣装では蝶を体現。

「幼虫ってちょっとグロテスクじゃないですか。“気持ち悪い”と言われれば言われるほど、羽ばたいてきれいになっていく。そんなイメージをアート的に表現しています」

 演歌歌手だから、演歌だけを歌う――。当たり前と思えることに対し、氷川きよしの存在はもはやその枠に収まり切れなかった。

「自分は冒険するのが好き。そして、みんなと同じことはしたくない。そもそも高校時代、(芸能部の)全員がポップスを歌っていた中で、“みんなと同じはイヤ”と歌い始めたのが演歌。デビューしたときには“まだ22歳なのに演歌を歌う”というギャップを面白がってもらえた。それを20年続けたら“演歌を歌って当たり前”のイメージに。だから、今度はそれを逆転したかったんです

現状維持では
いられない

 突飛で奇抜なように見えても、氷川の心の根幹は何も揺らいでいない。ジャンルという枠組みを超え、羽ばたき始めた氷川の目には今、どんな景色が見えているのだろう?

「まだ発売前だから、ドキドキして胃が痛いんですよ。聴いてもらったときに、誰がどういう反応をしてくれるかな? って。演歌だけがお好きな方は“ちょっと無理”と思うかもしれないけど、一緒に冒険する気持ちで聴いていただけたらうれしいです。現状維持ではいられない。挑戦することで、新しい道が開けてくる。やっぱり、誰もやらないことをやっていきたいんです

42歳、鷹の生き方に共鳴

知人に『鷹の決断』という動画を教えてもらったんです。自分自身と今回の新アルバムに、すごくリンクするように感じて。年をとった鷹は爪、くちばし、羽などが弱って獲物がうまくとれなくなるそうです。そのまま死を待つか、苦しい自分探しの旅に出るか……。変化を選んだ鷹は山の頂上で自分のくちばしを叩き壊し、爪をはぎ取り、羽を抜く。半年以上をかけて自らを再生させた鷹は、残りの人生を悠々と生きていく。アメリカインディアンの神話だそうですけど

 自分は今、42歳。心に刺さるものがありました。植物もそうですよね。花も1回散って、また咲かせることができる。痛くても、苦しくても、自分に信念や強さがあったら、絶対負けないと思う。カッコいいですよね。やっぱり、そういう生き方をしていきたい。改めてそう思いました」

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発売/日本コロムビア

スタイリング/伊藤典子(hoop) 
ヘアメイク/遠山雄也(RELAXX) 衣装協力/KOH'S LICK CURRO