スタッフからの不安や不満はない

 そんな中、インタビューに答えてくれたのが『the b 八王子』を1棟そのまま提供するISHIN HOTELS GROUPのオペレーション本部マネージングディレクターの八木貴博さんだ。こちらはホテル療養が始まる前、八王子市より、「市と地元医師会で協力するので考えてもらえないか」と打診を受けて療養者の受け入れを決めたそうで、快くインタビューに応じてくれた。

「社会への貢献、社会からの要請として大切な役割だと捉えて手を挙げました。一方で、ホテル利用者が激減して苦しい状況のなか、従業員の働き場を確保するという意味で応えたという面もあります。初めての経験であることに加えて、都内で感染が拡がるスピードへの対応もあり、いざ受け入れが決まってから、実際に軽症者が入所するまでは急ピッチで進める必要があったことは大変でした。

 なぜならば、the b 八王子にはテナント様がいたり、事務所貸しもしていますし、飲食店もあります。そうしたところへの説明や、さらに大切な周辺の住民のみなさまへの説明など時間がかかりました。飲食店様などは、全店お休みしていただいています。

 また本件を進めるにあたり、スタッフの安全確保を最重要視し、決定前にスタッフが担う業務内容や安全面の確認をいたしました。そして決定後は、東京都の指示に従い、ホテル内を汚染ゾーンと衛生ゾーンに区分けしたり、業務フローを整える事前の研修など、感染防止策を徹底して講じていきました

 ほかのホテルではどこも「運営には一切、携わっていない」と言っていたが、こちらは1棟そのまま貸し出すだけでなく、ホテルスタッフも勤務している。

「スタッフに概要を説明し、そのままここで働くか、休むか、ほかのグループ・ホテルで働くか希望を取り、普段の約半分のスタッフが今も働いています。現在の予定では7月中旬まで療養者の方が宿泊し、8月1日から一般営業に戻ります。期限が区切られていることで、スタッフも緊張を途切れさすことなく働くことが出来ていると思います。これまで特に不満や不安は聞かれません

 主な業務を尋ねたところ、「療養者さんに朝昼晩、1日3回のお弁当の配布ですとか、部屋から出たゴミを持って来てもらい、それをまとめるなどです。あとは館内放送のお知らせ。また看護師さんと事務局の担当者は24時間常在していますので、その部屋の清掃もあります。さらに事務などの内勤もあります」とのこと。

 ゴミの片付けといっても感染性廃棄物の処理になる。長袖ガウンやマスク、ゴーグルなどの着用が必要になり、感染最前線だ。また療養者への差し入れを受け取り、あらかじめ用意した「差し入れコーナー」に置いておくと、療養者本人が取りに来ることができるようにしているそう。ちなみに医師は昼間のみ常在していて、療養者に何かあった場合は館内電話で連絡をする。