リネン類はすべて焼却処分

 しかし、療養者はホテルでは基本、部屋から出ることはできない。『the b八王子』の個室に窓はあるが、「近隣の住民のみなさまもいらっしゃるので……」ということで、窓を大きく開けて過ごすことはできないという。ホテルの個室で24時間、最低でも2週間を過ごすのは中々にハードだが、仕方ない。

 さらに、「タオルやアメニティーはご自身でお持ち込みされたり、ホテルからも提供いたしますが、その間シーツなどのリネン類は交換しません。当ホテルでは退所されるときにリネン類はすべて焼却処分することになりました」というから、ホテルならではのパリッとしたシーツを毎日味わうことも難しい。

 お湯を沸かすポットなど部屋の備品はそのまま使うことができるが、自分の下着などは部屋で手洗いして室内に干すしかない。東京都のサイトには体温計やタオル、パジャマなどは持参するよう書いてあるが、パジャマも手洗いしなきゃいけないのか? どうも快適な療養生活というふうにはいかないようだ。ちなみに『the b 八王子』では宿泊費やお弁当代だけでなく、アメニティ・グッズなども無料で提供している。

 さて、『the b 八王子』が療養者向けに提供されるのは7月中旬まで。その後は東京都から請け負った業者によって館内一斉の消毒が行われるという。

「8月1日から一般営業に戻りますが、果たして風評被害のようなものがおこるかどうか読めないですね。この状況の中、最前線で感染防止策を学んで実践してきたので、その軽症者受け入れをしたホテルである学びを今後のオペレーションに実際に生かし、安心安全な滞在が出来るということを、より実践的に、より具体的にお客さまに伝えていきたいと思っています」

 大変な役目を担ってくれたホテルには感謝しかないが、第2波がこの秋にも来ることも予想される中、ホテル療養に関して東京都や厚労省は情報をもっと公開してほしいところだ。

 誰もが利用の可能性があるホテルが、どういう場所かわからないまま、体調が不安定の中、2週間の滞在を決めるのは難しい。また、療養者がホテル個室に閉じこもったまま不自由な生活を送らなければならない今の状態も、改善を望みたい。

<取材・文/和田靜香>