元・朝ドラ女優たちの現在地

 また、かつてより露出が減り、一時は引退説もささやかれたのが井上真央だ。オーディションなしで『おひさま』('11年前期)に主演。これは実績重視でヒロインを選ぶようになった近年、増えてきたパターンで、ほかに有村架純吉高由里子堀北真希らがいる。

 しかも、井上の場合、その後、大河ドラマの『花燃ゆ』('15年)にも主演。大河との二冠達成は、やはりオーディションなしで『純情きらり』('06年前期)に主演した宮崎あおいと彼女、あとは松嶋菜々子(ただし、大河は唐沢寿明とのダブル主演)しかいない。

 ただ、V6・岡田准一と再婚して、子供も授かった宮崎に比べ、こちらは嵐・松本潤との「永い春」が続いている。露出が減ったのも、事務所の移籍など事情がいろいろ絡んでいるのだろう。

 久々の民放連ドラとなるはずの『二月の勝者-絶対合格の教室―』(日本テレビ系)もコロナ禍により、放送のメドが立っていない。子役時代にも少女期にもヒット作を持つ人だけに、さびしくも感じられるここ数年だ。

周囲を気にしながら、自宅から自転車で出てきた井上真央
周囲を気にしながら、自宅から自転車で出てきた井上真央
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 さらに、朝ドラ女優には『あぐり』('97年前期)の田中美里のように、主演の3年後、パニック障害を患って療養生活を送った人もいる。かと思えば『純と愛』('12年下半期)の夏菜のように、視聴率や評判がパッとしなかったこともあって、撮影期間中、酒びたりだったことをのちに告白した人も。朝ドラが黒歴史になり、それがバラエティーでの持ちネタになるというレアなケースだ。

 何はともあれ、朝ドラ主演の重責は大変なものに違いない。その重責を果たしながら、ともすればそのイメージに呪縛され、苦闘していかなくてはならない彼女たち。そんな元・国民的ヒロインたちにエールを送りたい。

PROFILE●宝泉 薫(ほうせん・かおる)●作家・芸能評論家。テレビ、映画、ダイエットなどをテーマに執筆。近著に『平成の死』(ベストセラーズ)、『平成「一発屋」見聞録』(言視舎)、『あのアイドルがなぜヌードに』(文藝春秋)などがある。