コロナの感染拡大を防ぐために在宅勤務という働き方が広がりました。それに伴って、パートナーのいる女性たちから「3度の食事の支度に追われて自分の仕事ができない」「夫がずっと家にいるのが耐えられない」といった不満の声も広がっています。一方、筆者の男性の友人たちからは「よかれと思って家事を手伝ったのに『やり方が違う』とか、妻の機嫌が悪くなっている気がする」といった嘆きの声が届いています。

 わが夫は60代の男性としてはまずまず、家事をしているほうだと思いますし、普通の男性がなかなか気づかない、いわゆる「名もなき家事」もこなしてくれています。でも、ここに至るまでにはいろいろありました。

当記事は「東洋経済オンライン」(運営:東洋経済新報社)の提供記事です

 今回は、夫の手伝いにどうして妻が不機嫌になるのか、自分の経験も踏まえて種明かしし、それぞれのご家庭で家事分担を進める際の参考にしてもらえればと思います。なぜなら、「Stay Home」は定年後の夫婦にとって避けられない、ずっと続く日常だからです。その日常の業務である家事の分担は、定年後の夫婦が平穏に暮らすためにはとても重要です。ちょっと相手の考え方を知って戦略を立ててみてください。

「夫は仕事、妻は家事」の価値観に育まれた50代

 定年が視野に入っている50代の人の多くは、「夫は仕事、妻は育児・家事」という価値観が色濃く残る中で社会人になりました。その後、女性の働く環境整備が進み、結婚しても、子どもを産んでも働く女性は増えていきました。会社も社会もこの30年で大きく変わり、今は共働き夫婦が当たり前で、若い夫婦では夫が家事や育児に協力的でないことを問題視するぐらい価値観は変わってきていると思います。しかし、50代は、まだまだ家事を女性が全面的に担っているという夫婦も少なからずあるのが実態です。

 そんな50代夫婦の場合、今まで家事をしたことがない男性ほど、このStay Home期間における家事の分担について、トラブルになっている気がします。外出自粛でずっと家にいるわけですから、気にも留めていなかった家事を妻が行っているのを目の当たりにする機会は増えます。家での仕事にどんなものがあって、どんなふうにするのかを初めて認識するわけです。夫はせっかく家にいるのだから存在感を示そうと、家事に参入しようと動き出します。妻のほうは負担軽減という意味では手放しで喜ぶべきところなのでしょうが、そう簡単に事は運びません。