ネットカフェから出て行き場を失った人たちの中には、同時に仕事を失った人も多い。2月からの累計では全国で5万326人(見込みを含む)が解雇や雇い止めになっている。『Tokyoチャレンジネット』という就労と居住のサポート事業はその人たちを救うためにあるはずなのに、うまくいってるのは受講中の人も入れると130名程度で、それよりも多い180人がそこから漏れ落ちてしまってるなんて……。

 さらに池川さんが言うには、「区市の窓口からのビジネスホテルの利用は6月末に終了しているんですが、その方たちの行方が追えていないのが大きな課題なんです」と憂慮している。区市の福祉窓口から入った638名も、今どうしているのか東京都は見えてないのが現状なんだという。

公園のベンチは手すりが設けられ寝ることはできない(筆者撮影)
公園のベンチは手すりが設けられ寝ることはできない(筆者撮影)
【写真】生活困窮者の支援に取り組んでいる東京都議会議員の池川友一さんと瀬戸大作さん

区によって大きく異なる対応

 それって、ビジネスホテルに一時的には保護してくれても、その後の相談にはのりません!ってことなのか? 一体その人たちはどこに行ってしまったんだろう? ネットカフェに戻ったのか? それとも最悪の事態に陥ってしまったのか……。

 その人たちの行方については、生活困窮者の支援をする『反貧困ネットワーク』の事務局長である瀬戸大作さんに伺ってみた。

「区市の福祉事務所の窓口からビジネスホテルに入った人は、区市によって大きくその後の対応が違っています。対応がいい区ではビジネスホテルを出てから、生活保護を申請してアパートに移り住めるサポートをしっかり受けられました。また、生活保護の申請時に所持金がない場合に仮払いの貸付金として全員が1万円を受け取り、足りなくなったらまた貸し付けてもらえた区もあります。その貸付金は生活保護費が出たときに、相殺されます。

 逆に対応がひどい区もあります。ビジネスホテルを利用した人が、所持金800円となっても仕事もないまま退室させられたり、食べるにも困って現金の貸付けをお願いしても断られ、フードバンクに行くように言われたり、災害用の備蓄品と思われるレトルトの白粥やサンマのかば焼きの缶詰、きんぴらごぼうの缶詰、それとペットボトルの水をくれたそうです。また、別の市ではアパートへの入居が認められず、無料低額宿泊所へ行けの一点張りでした。こうした地域差は今、大きな問題になっています

国会前で貧困問題の実情についてスピーチをする瀬戸大作さん
国会前で貧困問題の実情についてスピーチをする瀬戸大作さん

 どうやら、その後の行方は「生活保護」へスムーズにつながるかどうか? にかかっているようだ。

 生活保護は80年代から徐々に国の負担を減らし、地方自治体の負担を大きくしてしまった。最近では安倍政権が支給される生活保護費そのものを下げ、その理由が「国民感情に沿ったもの」とされ、生活保護を利用することのイメージそのものも同時に悪くなっている。

 そうしたことが影響し、福祉事務所の体質の違いなどもあり、自治体ごとに今、かなり対応が違って明暗が分かれてしまっている。これではまるでロシアン・ルーレットのよう。たまたま居合わせた自治体の福祉事務所の事情で、命運が分かれてしまうのだ。