ICUで大勢の重症患者を目にして真っ青に

 ネットで調べまくった。陽性の妊婦が出産するとき、インドでは帝王切開になる。10歳以下の子どもにも重症化リスクがある。そんな情報にうろたえた。通常なら自宅内隔離も可能な軽症だが、家族事情から入院を勧められ、従うことにした。

 ところが、陽性者本人は入院するにも、会社のドライバーもタクシーも頼めない。救急車を呼んだが、到着するとマンション中の窓という窓が開いて住民たちの視線が注がれ、「針のむしろ」状態に。同じ時間、濃厚接触者にあたる妻と息子はPCR検査をするため、タクシーで同じ病院に向かった。

カルナータカ州の緑の多い町に在住(北村研二さん提供写真)
【写真】自宅でオンライン授業を受ける息子、街中の様子など

「病院で妻と息子に再会。泣きじゃくる息子と別れるのも辛かったですが、その後が……。防護服を着せられ、車椅子に乗せられ、どういう事情かわかりませんが、ICUを通って診察室に連れていかれたんです。ICUには人工呼吸器をつけた大勢の重症患者がベッドに横たわっていて……」

 ICUは、ものものしかったと言う。自分も重症化し、ああなるかもしれないと、真っ青になった。

 アビガンなど数種の薬を投与され、病室へ。動脈血酸素飽和度は98パーセントで胸をなでおろした。入院初日は、政府機関や会社、マンションから、次々と細かなヒアリングを受け続けることとなった。

PCR検査の結果、息子に陽性が確認される

 入院は2週間の予定だったが、北村さんは1泊2日で退院した。妻と息子のPCR検査の結果が出て、妻こそ陰性だったが、息子に陽性が確認されたからだ。

「息子の感染は、自分の感染以上に落ち込みましたね」

 2つの選択肢があった。息子も一緒に入院させるか。自分がマンションに戻って息子と2人で隔離生活をし、妻をホテルに避難するか。Skypeを使って夫婦で話し合い、後者を選んだのは、3月から家にこもりっきりの息子に、さらなるストレス負荷をかけたくなかったから。もしも家で「何か」が起きたら、救急車を呼んでまた病院に行けばいいのだから。苦渋の選択だったそうだ。

 戻ったマンションは厳重な消毒が施された後。自室のドアに「Caution(警戒)」と赤文字で書かれた大きな紙が貼られていた。同じフロアの住民らが濃厚接触者に認定され、PCR検査を受けたと聞いた。さらに、会社オフィスの同僚もPCR検査を受け、工場が48時間の操業停止となった。感染は不可抗力だが、「自分が悪いことをした」意識にさいなまれたとも言う。