世の中には「ヤバい女=ヤバ女(ヤバジョ)」だけでなく、「ヤバい男=ヤバ男(ヤバダン)」も存在する。問題は「よいヤバさ」か「悪いヤバさ」か。この連載では、仁科さんがさまざまなタイプの「ヤバ男」を分析していきます。

第10回 古市憲寿

「若者のテレビ離れ」という言葉を聞いたことのある人は多いでしょう。ネットの台頭で、これまで絶大な影響力を持っていたテレビがその座を明け渡してしまうかもしれない。若者に見てもらうために、制作側はネットで人気のYouTuberをバラエティー番組にゲスト出演させたりしていますが、たいていブレイクするには至りません。それはテレビで好かれる人と、ネットでウケる人が違うからだと思うのです。

 テレビはルックスや出身大学、経歴など「わかりやすい紋所」が物を言います。しかし、ネットではそういうエリートコースを歩んできたにも関わらず、脇道にそれるかのような生き方をしたり、非リア充だったり、シニカルな視点を持つ人に人気が出ることもあるようです。つまり、ネットとテレビで受ける人というのは正反対と言ってもよく、それだけに、両方で活躍できる人はかなり稀有な存在だと言っていいでしょう。

 しかし、いるところにはいるものです。新進気鋭の社会学者としてデビューした古市憲寿氏はTwitterのフォロワー数が34万人超とネットでの支持者が多く、現在ではワイドショーのコメンテーターやバラエティー番組にもひっぱりだこ。それは古市氏がテレビとネットで受ける要素を半分ずつ持っているからだと思うのです。

 古市氏がテレビ受けする要素を書き出してみましょう。

高学歴である(慶応義塾大学から東京大学大学院総合文化研究科 国際社会科学専攻 相関社会科学コース修士課程修了)
権威ある賞を受賞している(文部科学省の外郭団体である「日本学術振興会」育志賞受賞)
おクニの役員も務めている(内閣府「パラダイムシフトと日本のシナリオ懇親会」メンバーなど)

 人は誰しもバイアスをかけて物事を見ていますから、こういう権威がずらっとならぶと視聴者は「頭のいい人が言うことは、本当だ」という先入観を抱きがちです。古市氏が言うことは「本当っぽく」聞こえるわけですから、テレビ向きの人だと言えます。