美輪明宏の言葉で迷いがなくなった

 当時の心境を夕刊紙のインタビューで、

《ミッチーというキャラクターが浸透したとき、何だか窮屈になったんです。そのころが一番しんどかった》

 と振り返っている。そんな苦しい時期に、及川を救ってくれたのが、’00年の舞台『毛皮のマリー』で共演した美輪明宏だった。

オリジナリティーあふれるセンスで時代を切り開いた2人の異才と公私ともに交流を続けた経験が、音楽や演技で生かされているようだ
オリジナリティーあふれるセンスで時代を切り開いた2人の異才と公私ともに交流を続けた経験が、音楽や演技で生かされているようだ
【写真】私服姿も知的でスマート! 『グランメゾン東京』の打ち上げに参加する及川光博

「小学生のときに美輪さんが出演する映画『黒蜥蜴(くろとかげ)』を見て以来、憧れの存在だったとか。’99年にトークショーで初対面。親睦を深めた際に、見せたいものと客の望むもののジレンマに悩んでいることを美輪さんに相談したところ、“人間は誤解されて当たり前。だから、誰がどう思おうが、自分の美意識で選んだ道を行けばいい”と言われ、迷いがなくなったといいます」(前出・音楽ライター)

 ファッション雑誌で対談した際に美輪は及川について、

《おもしろいイキなセンスを持っている人だと思っていたの。(中略)番組で話しているのを見て、非常に知的人種だと感じていた。この人はもっとレベルの高い芝居の世界に行ける人だと感じた》

 と絶賛。それ以降は王子様キャラが完全に定着したようで、一緒に仕事をした関係者たちは「カメラが回っていないところでも、あのまんまですよ」と口をそろえる。

「番宣でたまに出るバラエティー番組の収録でも、常に王子様のように言動がスマートです。クイズ番組に出たときは正解率が高く、知的さも備えている印象を受けました」(制作会社関係者)

「前回の『半沢直樹』でご一緒したときは、暑い日の外ロケだったにもかかわらず、待ち時間も嫌な顔ひとつせずにスタッフと談笑されていました。撮影が終わったときは、エキストラのほうにもきちんと挨拶して帰られて、品のよさを感じましたね」(エキストラに参加した女性)

 周囲も絶賛する名バイプレーヤーへ成長したのだった。『半沢』では“施されたら施し返す。恩返し”という名ゼリフもあるが、今度は及川が恩を返していく──。