そして、緊急事態宣言期間中に、葉月さんが買ってきた赤ワインから、大ゲンカが勃発しました。スーパーの袋の中のワインを見つけた彼が言いました。

「なんでワインなんか買ってきたの?」

「えっ、今夜は飲みたいと思ったから」

「いくらだったの?」

「2000円。ちょっと奮発しちゃった」

 そう言うと、洋太さんの顔がみるみる怒りに満ちあふれていきました。

「なんでそんな無駄遣いするんだよ」

 売り言葉に買い言葉で、葉月さんも語気を荒げて言い返しました。

「今週1週間、私は仕事を頑張ったし、そのご褒美に2000円のワインを飲むのが悪いことなのかな? 私は無駄づかいだとは思わないよ」

 すると、洋太さんはスーパーの袋の中に入っていたネギを取り出し、葉月さんの頭をそれで叩いて言ったのです。

「俺への当て付けか? 今月は仕事なくて無収入だったけど、貯金崩して約束の食費は入れたよな。俺の金を1円たりとも無駄に使うな!」

 その後は、大声で罵詈雑言を怒鳴りちらし、そのまま外に出て行ってしまったのです。

 ここまでの出来事を語ると、葉月さんは、私に言いました。

「仕事がなくてイライラしていたのはわかります。でも、たった2000円のワインを買っただけで、ネギで頭を叩かれる。私は何を見て彼のことを好きになり、結婚をしたのだろうと、そこで一気に気持ちが冷めてしまいました」

 この出来事が、葉月さんに離婚を決意させました。

 さらに葉月さんは、私に言いました。

「彼は、生きるための最低限のお金があればいい人。心を豊かにすることにはお金を使わない。それは無駄づかいなんです。例えば、バーに行って1杯1000円のハイボールを飲むなら、家でウィスキーを買ってソーダで割れば100円ですむ。2000円のワインも200円のカップワインも酔っぱらえば同じ。私は一生懸命に働いた自分へのご褒美に、たまには奮発して美味しいものを食べたいし、旅行にお金を使うことも贅沢だとは思わない。無駄なお金を一切使いたくないという彼とは、根本的に考え方が違うんです。お金をどう使うか、その考え方が一致していないと、一緒に生活していくのは難しいですよね

 葉月さんは、「次の結婚相手は、金銭感覚の会う人を選びたい」と、言いました。