女性アナウンサーに求めるもの

 そもそも視聴者は女性アナウンサーに何を求めるのか。「男だろうと女だろうと、ちゃんとニュースを読んでくれればいい」という人が大半だと思っていたのだが、世の中そうではないらしい。それを教えてくれたのは、『報道バズ ~メディアの嘘を追いかけろ!~』というネット配信のドラマだった(Amazonプライムビデオ、GYAO!ストアなど)。

 主人公は、元・民放キー局のいわゆる「女子アナ」の和田明日佳(アメリカで活躍する俳優・本田真穂)。報道志望を訴えても、与えられる仕事はバラエティー番組。しかも、演出でチョコバナナ練乳がけを上目遣いで食べさせられるようなものばかり。

 男の欲望目線でしか使われないことに心底嫌気がさし、ニューヨークのネットニュース編集局へ単身乗り込む。日本のテレビ局のタブーに斬り込み、「嘘のない報道」を目指すものの、立て続けにトラブルに見舞われて……という物語だ。

 第4話で、和田が言及したのは「テレビでの女性の扱い」だった。局アナ時代、苦情やクレーム、誹謗中傷が毎日のように届いた。それは話した内容ではなく、髪形やメイク、服装など、いわゆる見た目に対するイチャモンが多かったという。

 また、オーストラリアのテレビ局の男性キャスター、カール・ステファノビッチが実際に行った実験も紹介。彼は毎日同じスーツを着て、クリーニングもせず1年間テレビに出続けたが、誰も気づかなかった。

 一方、毎日違う服装の女性キャスターには、服装や見た目に対する誹謗中傷が届いたという。しかも、女性キャスターに誹謗中傷を送るのは女性であると指摘。日本だけじゃないのね……。

 劇中、和田は上半身下着姿で、「テレビはこうして女性の価値は見た目であるというメッセージを送っているのです」と話す。下着姿と何が違うのか、と皮肉を込め、「女性は清楚で魅力的でなければならない」という価値観の押し付けを問題視するべきと訴えた。
 
 いや、ほんとそうだよね。そのうちアナウンサーを志望する女性なんていなくなるんじゃないかと危惧もする。

 ということで、2020年入社の新人アナウンサーのみなさん! NHKは16名(8名)、日テレは4名(2名)、TBSは2名(1名)、テレ朝は4名(3名)、フジは3名(2名)、テレ東は1名(0名)。カッコ内が女性ね。

 青息吐息のテレビ界を担うみなさんに期待するのは、個性と特性を前に前に。前近代的な価値観に唯々諾々とならず、独自の色をぜひ出してほしい。嘘臭さやわざとらしさ、予定調和を視聴者はもう求めていないからね。

 そして、毎年、毎年、懲りずに作られている各局の女子アナ限定カレンダー、あれ、もうやめたら? 日テレは早々にやめて正解。このカレンダーに載るのは、ほぼほぼ若手のアナウンサー。年齢制限でも設けているのか、定義も意味不明。

 たいていがひどい写真というか、センスのないカメラマンが撮影しているのも問題(シャンパングラスとか花とか持たせんなよ!)だし、なかには「あきらかに嫌がっている」顔の女性アナウンサーもいる(よく見ればわかる)。いやいや参加させられて、ダサイ服で古臭いポーズをとらされて気の毒だ。

 逆に「今年はもう呼ばれなかった……」と複雑な思いをする女性アナウンサーだっているはず。誰が買うのか知らんが、あのカレンダー廃止に一票。女性アナウンサーを見た目と年齢で商品化するのをやめたってくれんか。

吉田 潮(よしだ・うしお)
1972年生まれ、千葉県船橋市出身。医療、健康、下ネタ、テレビ、社会全般など幅広く執筆。『週刊フジテレビ批評』(フジテレビ)のコメンテーターもたまに務める。また、雑誌や新聞など連載を担当し、著書に『幸せな離婚』(生活文化出版)、『くさらないイケメン図鑑』(河出書房新社)、『産まないことは「逃げ」ですか?』『親の介護をしないとダメですか』(KKベストセラーズ)などがある。